地獄界曼荼羅の前に曼荼羅とは何なのか、FGOにおける曼荼羅の意味とは何なのか考察していきます。
密教とは
概要
平安時代に最澄と空海が築き上げた天台宗及び真言宗の密教を指す。
空海は日本から唐へ留学して当時最先端の仏教思想だった密教を学び、帰国した彼は密教の教えを元に真言宗を開いた。
悟りの境地は言葉で語ることが出来ないほど奥深いものであることを「秘密」という言葉に置き換えた。
すべての宇宙の根源は大日如来であるとし、大日如来から悟りへの道を学ぼうとする教え。
「大日如来が語った真実の言葉」という意味。
真言を唱えることで、宇宙から仏を呼び出し自らと一体化することができる。
大乗仏教と密教
出家をせずに修業の道を究める『在家』の立場でも救われることを説いたのが大乗仏教である。
「利他行(自分より他人の幸せを願う)」の精神を持つ。
唐から密教を持ち帰ってきた最澄と空海によって仏教と結び付けられるようになった。
密教の成り立ち
人間や宇宙の根源は何かと考えていた空海は、仏教にこそ自分の求める答えがあるのではないかと山奥で修行に励んだ。
その後空海は『大日経』に自分が求めてきた真理があると考えたが、『大日経』は梵語で書かれていたので内容を理解することができなかった。
空海は『大日経』の教えを理解するために遣唐使となり、唐でさまざまな宗教文化を吸収した。
密教の正統後継者・恵果から密教を学んだ空海は日本に帰り、真言密教を開いた。
特徴
「宇宙の根源たる大日如来から真理を体得する」ことが、密教最大の特徴である。
即身成仏
生きたまま仏と一体化すること。
この世のすべては大日如来が姿を変えて顕れているのだから、すべての人間は生まれながらにして仏性を備えている。大日如来の教えを学ぶことで仏となることができる、という考え。
三密修行
口密(仏の真言や陀羅尼を唱える)・印相(仏の印を結ぶ)・三摩地(意識を集中して心を仏の境地に至らせる)の三つを三密といい、この三密によって大日如来との一体化を目指す。
三種の仏身観
- 化身
- 法身
- 報身
①化身…歴史的存在を強調する
②法身…悟られた真理の当体を人格化して仏身と見る
③報身…化身と法身の中間的役割で、修行を積んだものに果報として現れる
曼荼羅とは
密教の世界観を絵で表現したもの。
曼荼羅と宇宙
密教において大日如来は宇宙の成り立ちそのものであり、大日如来の原理を具現化したのが宇宙であると考えられている。
曼荼羅(マンダラ)という名前の由来
古代インドのサンスクリット語(梵語)が由来である。
『マンダラ』という名前は『マンダ』と『ラ』の二つに分けられる。
『マンダ』は「中心」や「心髄」という意味で、釈迦が悟りを開いた菩提の道場や醍醐(最上級の味)を表す。
『ラ』は「所有」という意味の接尾辞である。
『大日経』では、「曼荼とは心髄で、羅とは円満である」と説明している。
仏教に置いて心髄は悟りを意味するので、曼荼羅とは「悟りを有する場」を示している。
特徴
『中心』がある
曼荼羅には必ず中央に本尊である中心尊格がいる。
曼荼羅では本尊が最も大きく描かれ、本尊から遠い仏ほどその姿は小さくなる。
本尊が周辺に波及するとともに、周辺部の神々が本尊に向かって帰依していく。
調和性をもつ
多くの異質的要素を包括しながら、全体的には高次の価値観によって調和して成り立っている。
曼荼羅のかたち
円形の曼荼羅
円形は図形の中で最も安定している形であり、曼荼羅における円は仏塔と満月を表している。
密教発祥の地であるインドでは、月の満ち欠けに心の段階的修行との相似性を見出し、完全なる境地ともいう満月を重視したのではないかと考えられている。
『外』の曼荼羅と『内』の曼荼羅
『外』の曼荼羅(可視的曼荼羅)
- 尊像曼荼羅
- 象徴(物)曼荼羅
- 文字曼荼羅
- 立体曼荼羅
一般的な曼荼羅は、可視的曼荼羅である。
『内』の曼荼羅(不可視的曼荼羅)
- 精神曼荼羅
- 身体曼荼羅
人間の複雑にして全体的な小宇宙を一つの統一体である曼荼羅と考えるものである。
曼荼羅の色彩
白:安定と静寂
黄:発展
赤:情愛・恩愛
青:調伏
両界曼荼羅(両部曼荼羅)
日本密教の二大経典である『大日経』の胎蔵界曼荼羅と『金剛頂経』の金剛界曼荼羅を一対にしたもの。
どちらも中心に大日如来が描かれている。
胎蔵界曼荼羅

『大日経』を曼荼羅で表したもので、中央に八葉の蓮弁を描き、中心には本尊である大日如来が座していて、周囲を宝幢如来をはじめとした四仏と四体の菩薩が囲んでいる。
女性が胎内で生命を育んで産むように、大日如来の教えが展開されていることに由来する。
左右(南北)三重、上下(東西)四重の計12院から成る。
409の尊格がいて、上方を東としている。
12院のはたらき
原則、各尊が一つの所属と役割をもつ。
①中台八葉院:大日如来とその属性を分担する四仏、補佐する四菩薩
②遍知院:一切遍知院を中心に知恵と生産を象徴している
③持明院:如来の降伏の力を表す
④釈迦院:密教が従来の仏教を摂取したことを示す
⑤虚空蔵院:虚空蔵菩薩を中心とし、あらゆるものを生み出す功徳を象徴する
⑥観音院:観音菩薩を中心とし、慈悲の働きを象徴する
⑦金剛手院:金剛手菩薩を中心とし、諸悪を倒す力を象徴する
⑧文殊院:文殊菩薩を中心とし、知恵の働きを象徴する
⑨蘇悉地院:如来のあらゆる働きの完成を主張する
⑩地蔵院:地蔵菩薩を中心とし、あらゆるものの救済を象徴する
⑪除蓋障院:除蓋障菩薩を中心とし、障害を取り除く働きを象徴する
⑫外金剛部院:曼荼羅を守り、その功徳を広める働きを象徴する
中台八葉院
東方:宝幢如来(初めて宗教的な世界に気付く心の象徴)
南方:開敷華王如来(悟りに向かって積み重ねる修行の象徴)
西方:無量寿如来(悟りの世界を実感する段階の象徴)
北方:天鼓雷音如来(涅槃に入ることの象徴)
※曼荼羅では必ず東方から始まる
金剛界曼荼羅
『金剛頂経』の第一章にあたる『初会金剛頂経』の曼荼羅が中心になっている。
大日如来の金剛不壊なる悟りの智恵の働きを表している。
胎蔵界曼荼羅とは異なり、同じ仏たちが何度も姿を変えて登場する。

九会曼荼羅
①成身会:金剛会曼荼羅の中心。密教的世界を具体的な姿で表したもの。
②三昧耶会:成身会を諸尊の働きを示すもの(三昧耶)で表したもの。
③微細会:成身会を文字・音で表そうとしたもの。
④供養会:成身会を諸尊の働き・エネルギーで表したもの。
⑤四印会:成身会を簡略化し、大日如来と各方位の代表的な四菩薩の姿を配している。
⑥一印会:成身会を本尊の大日如来のみで表したもの。
⑦理趣会:金剛界曼荼羅の教えを金剛薩埵で表したもの。
⑧降三世会:教えに従わない者のために降三世明王を表したもの。
⑨降三世三昧耶会:降三世会を諸尊の働きを示すもので表したもの。
金剛会五仏
大日如来の一部分としての役割が強い。
①中央:毘盧遮那(大日)如来
②東:阿閦如来(言うことを聞かない者を慈悲の立場から調伏する)
③南:宝生如来(宝を生じる)
④西:阿弥陀如来(慈悲)
⑤北:不空成就如来(如来の働きと功徳の素晴らしさを象徴する)
曼荼羅と宇宙
細密な絵で表現された曼荼羅は宇宙を表しているともいわれる。
インドの密教では我々を包み込む宇宙を大宇宙(マクロコスモス)と身体に象徴される小宇宙(ミクロコスモス)との一体化を瑜伽(ヨーガ)と呼んでいる。
考察
「曼荼羅は宇宙(の根源である大日如来)を表したもの」と考えると、


曼荼羅は概念宇宙である可能性があります。
また、ソロモンの本拠地である時間神殿は宙の外、虚数空間の工房でした。

しかしCCCコラボでは廃棄孔=宙の外とも言われていました。

虚数空間=宙の外=廃棄孔で曼荼羅が「孔」だとすると、胎蔵界曼荼羅(ヘブンズフォール)が廃棄孔であることに繋がります。
(『辺獄』も廃棄孔的な意味を持っている)

なので、地獄界曼荼羅は虚数空間に存在していて廃棄孔的な役割を持っているのではないかと考えています。
参考資料


