基本情報
簠簋抄とは
内容
晴明は、大唐で十年間修行をすることになった。
大唐へ渡るまでの期間、大唐で修行する期間、大唐から帰朝する期間がそれぞれ三年三ヶ月あり、合わせて十年間になる。
晴明は自分の留守を弟子の道満と妻の梨花に任せて唐へ渡った。
ところが、晴明の留守中に道満は梨花を妻のように愛するようになった。
ある時、道満は梨花に「私は十年間修行をしてきたのだが、その験はあるだろうか」と尋ねた。
梨花は「石櫃があるのは知っているが、中に何が入っているのかはわからない」と答えた。
道満が石櫃を開けると、金烏玉兎集が入っていた。
道満は梨花にこの書を貸してほしいと頼んだが、梨花は「晴明がやがて帰ってくるのだから、貸すことはできない」と答えた。
しかし、道満が「急いで写し取るから、少しの間貸してほしい」と言うので、梨花は渋々金烏玉兎集を渡した。
道満は書の内容を尽く写し取り、元の石櫃にしまった。
その後、道満は晴明にこう語った。
「天竺で金烏玉兎集を賜る夢を見たのですが、それは正夢にて、こうしてこの書を得たのです」
「夢を見たというのはまったくの嘘だ。
夢で書を手に入れたとしても、夢から覚めてなお自分の手元にあるわけがないだろう」
晴明と道満はしばらくの間言い争いになり、とうとう互いの首を賭けることになった。
そして、道満は懐から金烏玉兎集を写したものを出し、晴明の首をはねた。
道満は「これでやっと梨花と一緒になれる」と思った。
一方、大唐の荊山に造立された文殊堂が一瞬のうちに燃えてなくなってしまった。
伯道上人は不思議に思って穀城山に登り、泰山府君の法を行ったところ、晴明の死相が映し出された。
伯道は日本に渡り、大和国に降り立った。
ある人に晴明の宿所を尋ねたところ、晴明は弟子の道満という者との論争に敗れ、三年前に首を切られて亡くなったという。
塚の上に柳が植えられているのが、晴明の墓だという。
伯道は古塚に立ち寄り草を引き捨て、土を掘り起こして見ると、十二の大骨と三百六十の小骨が尽くばらばらになっていた。
伯道は骨を拾い集めて生活続命の法を行い、晴明を生き返らせた。
晴明は「師弟の契りを忘れずに私を救ってくれて誠にありがたいことです」と涙を流した。
伯道が晴明の敵を討とうと竹林の中にある晴明の屋敷を訪れると、道満が出てきた。
「晴明はある者と争って首を切られ、三年前に亡くなりました」
「それは嘘だ。私はたった今晴明に会い、一晩泊めてもらうと約束したのだから」
「もし晴明が本当に生きているのならば、私の首を切っても構いません」
「晴明がここにいたら、必ず首を取ろう」
伯道が手をたたいて晴明を呼ぶと、晴明が忽然と姿を表した。
そして、道満の首を切って金烏玉兎集の写しを燃やし、梨花も殺めた。
道満の塚には墓標として松の木が植えられた。
伯道は唐に帰り、金烏玉兎集を修復した。