南斗星君は星を神格化した五斗星君のうちの一人で、寿命を司る神である。
人間の死を司る北斗星君とは対を為す存在で、人間の生を司ると考えられている。
- 東斗星君(計算を司る)
- 西斗星君(護身を司る)
- 南斗星君(人間の生を司る)
- 北斗星君(人間の死を司る)
- 中斗星君(保命を司る)
神話伝説
『捜神記』
管輅が平原を通りかかって顔超という少年の人相を占うと、若死にの相が表れていた。
顔超の父親が管輅に息子の寿命を伸ばしてほしいと頼むと、管輅はこう答えた。
「家に帰って清い酒を一樽と、乾いた鹿の肉を一斤買っておきなさい。
卯の日に、麦の刈跡の南側にある大きな桑の木の下で二人の男が碁を売っているから、あなたはそこへ行って酒を注いで乾肉を出しなさい。
二人が酒を飲み終わったらまた注いでやり、それを全部なくなるまで続けるのです。
もし何か聞かれても、ただ頭を下げていれば大丈夫です。ただし、口をきいてはいけません。
そうしていれば、きっと誰かがあなたを助けてくれるでしょう」
顔超は管輅に言われた通りに大きな桑の木へ向かうと、二人の男が碁を打っていた。
顔超が乾肉を差し出して酒を注いでも、彼らは勝負に夢中になっていて顔超には見向きもしなかった。
酒がなくなっては注ぐのを繰り返しているうちに、北側に座っていた男が顔超に気づいた。
「なぜここにいるのか」と男が顔超を叱りつけても、顔超は管輅に言われた通り頭を下げるだけで何も答えなかった。
すると、南側に座っている男が「この若者の酒を飲んだのだから、返礼しないわけにはいかない」と口出しした。
北側の男が「閻魔帳の寿命はもう決まっている」と言うと、南側の男は北側の男に閻魔帳を見せてもらった。
帳簿に記されていた顔超の寿命は十九歳となっていたが、南側の男が上下逆のしるしを付けて九十歳まで生きられるように書き換えた。
顔超は頭を下げて帰宅した。
後に、管輅は顔超に北側に座っていた男が北斗星で、南側に座っていた男が南斗星だったことを伝えた。
南斗星は生を司り北斗星は死を司る。
人はみな母の胎内に宿り南斗星から北斗星へ進んで行くので、願い事はみな北斗星にお願いするのであった。
参考資料
- かみゆ歴史編集部「ゼロからわかる中国神話・伝説 (文庫ぎんが堂) 」イースト・プレス、2020年
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