盤牛は中国神話に登場する盤古という神が由来である。
本来の名は盤古王だが、『簠簋内伝』では牛頭天王と関連付けるためにあえて「牛」を用いたと考えられている。
中国神話
盤古
盤古は三国時代の呉の徐整が記した『三五歴紀』に登場する原初の神で、道教の最高神である元始天尊と同一視されることもある。
宇宙のはじまりの時、世界は天も地も混ざり合い混沌としていた。
盤古は約1万8千年間暗闇の中で眠っていたが、世界が天と地に分かれてはじめて目を覚ました。
盤古は再び天と地が合わさることを恐れ、足で地を踏み手で天を押さえ続けた。
ずっとその姿勢を保っていたので、身長は9万里まで伸びた。
だが、やがて盤古は力尽きて倒れてしまう。
彼の息は風雲となり、漏れた声は雷となった。
左目は日、右目は月になった。
彼の肉体のすべての部分が大地に還って万物を生んだ。
『簠簋内伝』
すべてのはじまりのとき、天は容貌がなく、地もまた形像がなかった。
天地は鶏の卵のように丸くひとかたまりになっていたので、これを「最初の伽羅卵」といった。
このとき、蒼々たる天が開け、広々とした地が闢いた。
その原初の世界に生まれて鎮座したのが、盤牛王である。
その身の丈は十六万八千由膳那である。
盤牛王はその円い頭がある方を「天」となし、四角い足がある方を「地」とした。
また、そそり立つ胸を猛火となして蕩々たる腹を四海とした。
頭は阿伽尼吒天に届き、足は金輪際の底獄に跨った。
左手は東弗婆提国を過ぎ、右手は西瞿陀尼国まで届いた。
顔は南閻浮提を覆い、尻は北鬱単国を支えた。
この三千大千世界のすべてのものは盤牛大王から生まれた。
大王の左目は日光となり、右目は月光となった。
大王が目を開けると世界は丹に染まり、目を閉じると黄昏になった。
大王が息を吐くと世界は暑くなり、吸うと冬になった。
そっと吹き出す息は風となり、吐き出す声は雷霆となった。
盤牛王が天上にいるときは大梵天王と呼び、下界に鎮座しているときは堅牢地神と呼んだ。
さらにこの神が迹不生であることから盤牛大王と名付け、本不生であることから大日如来と呼んだ。
盤牛王の本体は龍で、広大な大地の下にその姿を潜ませている。
風によって龍はさまざまな姿になる。
左に現れては青龍の川となり、右に現れては白虎の園となる。
前に現れては朱雀の池に水をたたえ、後ろに現れては玄武の山々にそびえ立つ。
盤牛王は東西南北と中央に五つの宮殿を構え、八方に八つの楼閣を築いた。
五宮の采女を妻に持ち、みな平等に慈しんだ。
そして、五帝龍王の子を設けた。
参考資料
- 藤巻一保「安倍晴明『簠簋内伝』現代語訳総解説」戎光祥出版、2017年
- かみゆ歴史編集部「ゼロからわかる中国神話・伝説 (文庫ぎんが堂) 」イースト・プレス、2020年
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