資料室 ビースト

なぜ、天照=大日如来=荼枳尼天=玉藻になるのか

Fateシリーズにおける玉藻の前は日本神話の最高神・天照大神と同一視され、さらに「アマテラス(垂迹)=(本地)大日如来(法身)=(報身)ダキニ天」となる設定がありますが、なぜそのような設定になったのか、という考察をしていきます。

天照大神=大日如来(本地垂迹説)

本地垂迹説において、天照大神と大日如来は同一の存在とされています。

本地垂迹とは…

本地(神様の来の境)は仏と同じであり、人々を救うために垂迹(仏様が神様に姿を変える)した、という考え
この考え方によって、天照大神は大日如来、八幡神は阿弥陀如来など多くの神々が仏と結び付けられました。
つまり、大日如来が人々を救うために姿を変えたのが天照大神というわけです。
なぜ大日如来と天照大神が結び付けられるのかというと、大日如来も天照大神と同じく太陽を司るからです。

神仏習合思想

神仏習合とは、平安時代以降人々の間に浸透した仏と神道を融合・調和させる思想のことです。
本地垂迹説はこの神仏習合思想の一つに含まれます。
 

天照大神=荼枳尼天

実は、天照=玉藻というのはまったくの型月オリジナル設定というわけではなく、マイナーな説ではありますが、一応天照と玉藻を同一視する説は存在します。

それがこの本、

https://amzn.to/312yaIp

この本では『玉藻の草子』によりながら玉藻の物語が紹介されています。
内容は

  1. 久寿元年(1154年)の春、鳥羽上皇の御所に美しい女性(玉藻前)が現れる
  2. 鳥羽上皇は玉藻の美貌と才覚に惹かれて夫婦の契りを結んでしまう
  3. 鳥羽上皇が病気になったので陰陽師・安倍泰成が鳥羽上皇を占ったところ、玉藻前の仕業だと言って泰山府君祭を行ったところ玉藻が那須野に逃げる
  4. 玉藻退治の院宣が三浦介義明と上総介広常に下り、二人は那須野で玉藻を発見したが逃げられてしまう
  5. 三浦介と上総介は国もとに戻って弓矢の訓練をしたが、なかなか退治できなかった
  6. ある夜、三浦介の夢に年頃の美しい娘が現れ「私を助けてください」と泣きつかれたところで目が覚めた
  7. 三浦介は玉藻が弱っていると思って狩りに出かけ、とうとう玉藻を退治した

伝承において玉藻の正体を見破った陰陽師は安倍泰成とされていますが、Fateでは暗黒イケモン・安倍晴明が見破ったことになっています。

玉藻の前は三浦介に弓を射られて退治されていますが、これはFateの玉藻も共通です。

 

 

超人オリオンは狩人で猛獣&魔性特攻スキルを持っていることからしてもまあそういうことのような気もしますが

また、天照大神と荼枳尼天を結びつける重要な記述がありました。

  • 東寺を中心とする真言僧徒は狐を辰狐王菩薩(=荼枳尼天)と称して神仏化し、天照大神に比定した
  • 東寺の高僧たちの間で荼枳尼天は王法守護の神であると同時に、王法を破壊する神でもあった
  • 玉藻に荼枳尼天の影響があったとすれば、王法破壊の側面が組み込まれていたということになる

『比定』とは

比較して定めること。他の類似のものと比べあわせて、同種類のものとして推定すること。
つまり、
「荼枳尼天とは天照大神のことだ」と考えていた人たちがいたということです。

東寺方即位法

天皇の即位灌頂。
中世から江戸時代にかけて、天皇が即位儀礼の場で行った密教修法。

即位式で高御座に臨む天皇が、密教の秘印を結び真言を唱えるという行為作法。
天皇が荼枳尼天真言を唱えることによって、荼枳尼天=天照大神と天皇が一体化する…らしい。
荼枳尼天は天照大神と同一の存在であり、大日如来の化身であるという話もある(諸説あり)。

天照大神=金色白面

Fateにおける玉藻は、天照大神の一側面を擬神化した分霊である金色側面の分霊…という設定になっています。

金色白面とは…

キャス狐のSG3で垣間見られる、九つの尾の神霊。
太陽を擬神化したもの。やさぐれた天照大神。
キャス狐が九尾状態になるとこの姿になる……ワケではない。
これはあくまで遥かな昔に在り、今も在り続けているキャス狐の大元である。
このクラスになると時間軸とかほんと関係ないのです。

霊廟で「妾はただそこにあるだけの人類悪」と言っていたのも、この金色白面です。

「時間軸は関係ない」というのはビーストが持つスキル(自力で取得したマーリンは除く)である『単独顕現』のことでしょうか。(『単独顕現』は”どの時空にも存在する”在り方を示すスキルなので、時間旅行を用いたタイムパラドクス等の攻撃を無効にする)

また、キングプロテアは金色白面同様、複数のサーヴァントが一丸となって戦って初めて打倒できる災害と言われています。
”災害”と書かれているところがポイントです。
ビーストは人類史を脅かす災害といわれています。
ということは、天照大神が人類悪、というよりは天照の分霊である金色白面が人類悪である可能性が高いということです。

大日如来=荼枳尼天

さて、型月設定では「天照大神=大日如来=荼枳尼天=玉藻」となっていますが、大日如来と荼枳尼天を同一の存在として見るのは基本的に不可能です。
なぜかというと、「大日如来が荼枳尼天を調伏した」話があるので、大日如来と荼枳尼天は別個の存在だからです。

 

  1. 大日如来は荼枳尼天を改心させるため大黒天に姿を変え、人間を食べることを禁じた
  2. 荼枳尼天は「人間を食べないと生きていけない」と言った
  3. 大日如来は荼枳尼天に死者の心臓であれば食べることを許した
  4. 荼枳尼天は仏道に帰依し、福伸となった

ここで「アマテラス(垂迹)=(本地)大日如来(法身)=(報身)ダキニ天」の『法身』『報身』について考えていきます。

『法身』とは

仏の悟りの境地(仏陀の教え)そのもの。
『報身』とは
修行を積んだ報いとして得た徳のこと。
なので、
荼枳尼天は大日如来の『徳』を受けて仏道に帰依した
⇒荼枳尼天は大日如来の徳の現れだ
⇒荼枳尼天は大日如来の化身だ
という考え方なんだと思います。

荼枳尼天=稲荷神

神仏習合思想の発展とともに、日本では、荼枳尼天が乗る狐と稲荷神の御使いの狐は同じ狐だ、ということで荼枳尼天=稲荷神とする考えが浸透していきました。

また、カルデアエースでも「荼枳尼天=稲荷神」について触れられています。

https://amzn.to/2RC0L4w

神仏習合の影響により、どの立場からでも好きな伝承や資料を引っ張って来られるようになりました。
その結果、稲荷神=宇迦之御魂=豊受大神=荼枳尼天 のような話が増えていったのだそうです。

まとめ

まとめると

天照大神は大日如来が人々を救うために変身(=垂迹)した姿だ(本地垂迹説)

大日如来が荼枳尼天を調伏して仏道に帰依させたことは、大日如来の『徳』によるものだ
⇒荼枳尼天は大日如来の徳の現れ(報身)だ
⇒荼枳尼天は大日如来の化身だ
さらに、荼枳尼天は天皇の即位法(東寺方)によって天照大神(大日如来)と同一視される

荼枳尼天が乗っている狐と稲荷神の御使いの狐は同じ狐だ
⇒稲荷信仰と融合
⇒荼枳尼天は稲荷神だ

という考えが習合して「アマテラス(垂迹)=(本地)大日如来(法身)=(報身)ダキニ天」となり、天照の性格の一つである玉藻の前は晴れて狐耳の良妻の姿を取るのだと思います(多分)。

晴碧花園 - にほんブログ村

にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 偉人・歴史上の人物へにほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

安倍晴明を大河ドラマに
安倍晴明関係の年表
安倍晴明関係の説話一覧
安倍晴明ゆかりの地
陰陽師たちの活動記録
Twitterをフォローする
平安時代について知る
TOPページに戻る
購読する
follow us in feedly rss
SNSで共有する