説話

撰集抄 現代語訳 巻八 一〇四 空也上人の手を祈ること

基本情報

撰集抄とは

『撰集抄』は鎌倉時代の仏教説話集。作者不詳。
全9巻。

内容

さて、平等院の僧正が驚いて人に言ったことには、僧正が空也上人に会ったとき、空也の左腕の臂が折れているのが見えた。

「その臂は、どうして折れているのですか」

「これは私が幼い頃、高いところから落ちたときに打ってしまったのです」

「ならば、私が祈祷を行って貴方の臂を治そうと思いますが、いかがでしょうか」

「ありがたいことです。どうぞお願いいたします」

僧正は「では、始めましょう」と言って不空羂索ふくうけんさくの神呪を唱えて祈り、三返終わる前に空也上人の臂は元通りになった。

仏法の効験が顕れ、僧正も喜んだ。

それだけではなく、一条天皇の御代、大和国から瓜を献上させたのだが、ちょうど天皇の御前に伺候していた雅忠という医者が、
「この瓜の中には、猛毒を含んだものがございます。食べた者は、直ちに落命してしまうでしょう」と申し上げた。

このことを天皇に奏上したところ、
「まことか。晴明は何と言うだろう。彼を呼べ」と言って、安倍晴明という陰陽師を召した。

天皇が「この瓜の中にはどのようなものがあるか、占い申せ」と仰せを下されると、晴明は程なくして「強い邪気があります」と奏した。

天皇は「ならば、行尊に祈祷させよ」と言って行尊を召された。
行尊が神呪を唱えて祈祷すると、それほど時間が経たないうちに多くの瓜の中から大きな売りが板敷きから二、三尺程踊り上がることが度々あり、ついには中から真っ二つに裂けて、一尺余りになる蛇が這い出てきて、死んでいた。

何とも不思議なできごとだった。

上古にもこのような話は聞いたことがなく、末の世にもないだろう。
雅忠・晴明・行尊は素晴らしい人たちだと世の人々は言った。

今の世にこのような優れた人々がいないことは、俗世を離れた身ではあるが、悲しいことだ。

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