説話

安倍晴明物語(安倍晴明記) 現代語訳 吉備大臣入唐のこと 付 殿上にて碁を打つこと

あらすじ

安倍晴明物語とは

内容

仲麿が遣唐使として唐に渡った翌年の霊亀三年(養老元年)八月、元正天皇は改めて吉備大臣を遣唐使に任じ、唐土に遣わした。

その頃、唐土は玄宗皇帝の治世で開元五年だった。

玄宗は吉備公に対面した際、日本からの貢ぎ物が少なかったことに激怒した。

「これは日本の帝は朕を軽んじている証拠だ。この吉備公も殺めてしまえ。
ただし、その才智を試して智恵の優れた者であれば赦し、日本に帰せ。愚かであれば殺せ」

吉備公はさまざまな方法で智恵を試されることになった。

第一の試練は、囲碁だった。

「囲碁は未だ日本に伝わっていないゆえ、吉備大臣も知らぬはずだ。これを打たせて、碁の打ち方を理解していなければ殺せ。
だが、もし理解できたならば、智恵のある者に違いないから、生かしておこう」と評定があり、皆で夜が明けるのを待った。

何も知らない吉備公は、宿所で眠っていた。

その夜、赤鬼がやって来て吉備公の前に現れた。

「我は去年遣唐使として唐に渡った安倍仲麿と申す。
日本に帰ることを許されず、この楼閣の上で虚しく最期を迎えた。
故郷に帰りたいと思う気持ちが強すぎるあまり、霊魂が楼閣に縛り付けられて、赤鬼となりこの辺りを彷徨っていたのだ。
そして今、お前は貢ぎ物が少ないという理由で智恵を試され、それを口実に殺められようとしている。

お前はまず最初に、囲碁を打たされることになる。
囲碁は未だ日本に伝わっておらず、明日宮中で憲当けんとうという者とお前を勝負させることが決まった。
今夜は憲当も宿所に帰り、明日のために夫婦で囲碁の練習をしているだろう。

我が、密かにお前を連れていき囲碁の打ち方を見せよう。
囲碁は、昔、堯王ぎょうおうの御子である丹朱に生まれつきの才能がないことを憐れんで、才智を高めるためにいろいろと工夫して囲碁を教えたのが始まりだ。

盤の長さは一尺二寸で十二月を表し、三百六十一は三百六十日を表す。
一はその数の元を表す。
九の星は九曜を表す。
黒と白の石は陰陽を表す。
そして、四角に固定された盤上で丸い石を動かす。
陰と陽が互いに生じて動き回るように、黒い石と白い石を交互に打っていく。
盤の筋を線道、縦横の交わるところを網羅という。
その網羅の上に石を打つのだ。
両目が陣地の内側にあるものを『生きている』という。
敵軍の戦術のように対戦相手の石に四方を囲まれていても、目があるものは『生きている』、目がないものを『死んでいる』という。

囲碁の戦略は、『黙(相手の陣地の中にわざと石を打って相手に取らせ、相手の石を殺す)』『攻(さまざまな方法で相手の石を攻撃する)』『こう(交互に相手の石を取り続ける)』などたくさんの戦術がある。
その時の機致によって勝負が決まる。
敵の石を多く取って味方の陣地を広めた方が勝つ」

仲麿はよく考えて勝負に挑めと細々説明し、吉備公を背負って憲当の家に連れて行き、碁を打っているところを見せた。
吉備公はそれを見て囲碁の打ち方を理解した。

吉備公が宿所に帰って夜が明けるのを待っていると、外が少しだけ明るくなってきた。

そして、吉備公は殿上に召されて憲当と対決し、二番とも勝利した。
帝をはじめその場にいた全員は吉備公の才智に感動して言葉も出なかった。

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『安倍晴明物語』を読む

序
占兆根元のこと
伯道上人のこと
安倍仲麿入唐のこと
吉備大臣入唐のこと付殿上にて碁を打つこと
吉備公文選を読むこと
長谷寺観音のこと付法道仙人のこと
吉備公野馬台の詩を読む并びに読む法のこと
吉備公仲麿が末を尋ぬること
晴明出生のこと
安倍童子竜宮に行きて秘符を得たること
安倍童子鳥語を聞き晴明という名を賜りしこと
道満のこと
道満と晴明智恵比べのこと
晴明入唐付伯道の弟子となること
晴明殺さるること
伯道上人来朝并びに道満法師ころさるること
人形を祈りて命を転じ替えたること
庚申の夜殿上の人々を笑わせしこと
花山院の御遁世を知ること
三井寺泣不動のこと
厭魅の法を以て蛙をころすこと

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