『安倍晴明物語(安倍晴明記)』第一巻に収録。
あらすじ
聖人というものは、生まれたときから聡明なものだ。
学ばずとも智恵があるから心が天地に交わり、万物に渡り形がなくともその道理を悟ることができる。
始まりがあるものには終わりもあることを理解していて、色を見てはその性質を悟り、音を聞いてはその意味を知る。
これらはすべて天地陰陽の道に通じている。
それゆえ、あらゆる物事を理解することができる。
それなのに、世の中の人々は生まれつきの性質が弱いから見ることも聞くことも間違うことが多く、真理はなおさら理解できないので暗闇に迷い込んだような状態になる。
こういった理由で彼らは天と地の間に生きていながら、天地の理にそぐわないのはいうまでもない。
聖人は彼らを憐れんで、天・地・日・月・雨・風などには吉凶があることを世の中に教えて広めた。
その吉凶を踏まえて占ったところ、先天運、後天運、納音はすべてその通りになった。
我が国の中世において、安倍晴明は特にこれらのことを悟っており、天文地理の吉凶をはっきりと理解して数え切れないほどの霊験を顕した。