『日本書紀』において、猿田彦(サルタヒコ)命は『鼻の長さは七咫(約126cm)で身長は七尺(約210cm)口元が明るく輝き、八咫鏡(大きな鏡)のような眼で、ホオズキのように赤い色をしている』と述べられている。
この風貌から猿田彦は天狗と同一視されるようになり、神社の祭礼では天狗のようなお面を付けて高下駄を履き、先導役として見られるようになった。
猿田彦と八咫烏
太陽の化身
『古事記』において猿田彦は「天の八衢にいて、上は高天原を照らし、下は葦原の中つ国を照らす神、ここにあり」とあり、『日本書紀』では「八咫鏡のように照り輝く眼」をもつと述べられている。
こうした記述から、猿田彦は天照大神のような太陽神だったという説もある。
また、猿が日の出の太陽を迎えるように鳴く習性から太陽信仰と結びついたという説や、古代における農耕は猿が棲む山に入り込む焼畑が始まりであったことから、山神や日の神として信仰されるようになったという説もある。
一方、カラスは夜明けに群れて騒ぎ鳴く習性から太陽信仰と結び付けられた。
先導役として
猿田彦と天孫降臨
天照大御神の御子神・天之忍穂耳命は葦原の中つ国の不穏な状況によって降臨できずにいたが、大国主による国譲りが完了し、ようやく降臨できる状況となった。
そこで、天照大御神と高御産巣日神によって再び中つ国に遣わされることとなった。
その準備中に、天之忍穂耳命と高御産巣日神の娘との間に邇邇芸命が生まれた。
天之忍穂耳命が邇邇芸命を遣わすことを進言したので、邇邇芸命は天降ることになった。
この後の展開は『古事記』と『日本書紀』でそれぞれ異なる。
カラスと神武遠征
『古事記』神武記では、神武天皇が熊野から大和に向かう際に、夢で天照から「天より八咫烏を遣わす」とのお告げを受けて実際に大きなカラスが現れて道案内をしたという話がある。
猿田彦もカラスも先導役としての側面をもっている。
カラスと天狗
日本の烏天狗は仏教の八部衆の一つである迦楼羅天の影響を受けているといわれている。
迦楼羅はインド神話における鳥類の王ガルダが仏教に取り込まれたものである。
半鳥半人で、炎のように赤い翼を持つ。
参考資料
- 戸部民夫「『日本の神様』」がよくわかる本 八百万神の起源・性格からご利益までを完全ガイド」PHP研究所、2004年
- 杉原 たく哉「天狗はどこから来たか」大修館書店、2007年
- 戸部民夫「神様になった動物たち」大和書房、2013年
- 藤井 耕一郎「サルタヒコの謎を解く」河出書房新社、2015年