『哲学と宗教 全史』を読んだ(後編)

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BOOK

『哲学と宗教 全史』の第7章〜第12章の内容メモです。
キリスト教、イスラーム教、ルネサンス時代の宗教改革、近代哲学などが登場します。

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  1. 第7章 キリスト教と大乗仏教の誕生とその展開
    1. 新約聖書が成立するまで
      1. セム的一神教の三宗教において教典の共通性が見られる理由
      2. 旧約聖書と新約聖書
      3. イエスの教えとパウロの教え
      4. 新約聖書のはじまり
      5. グノーシス主義
    2. 初期のキリスト教による布教戦術
      1. イエスの誕生日を冬至に定める
      2. イエスを抱く聖母マリア像を作る
      3. イエスの顔つきをゼウスから拝借
      4. 三位一体説
      5. ネストリウス派が異端となった理由
    3. キリスト教の東西分裂
  2. 第8章 イスラーム教とは?その誕生・発展・挫折の歴史
    1. イスラーム教とは
      1. イスラーム教におけるムハンマドの立場
      2. イスラーム教の聖書・クルアーン
    2. 六信五行
    3. ムハンマドの生涯
    4. 偶像崇拝の禁止
    5. シーア派とスンナ派
      1. スンナ派
      2. シーア派
    6. 4人妻という考え
  3. 第8章(2)イスラーム教にはギリシャ哲学を継承し発展させた歴史がある
    1. イブン・スィーナーの画期的な思想
    2. イブン・ルシュドの二重心理
  4. 第8章(3)イスラーム神学とトマス・アクィナスのキリスト教神学との関係
    1. トマス・アクィナスの偉業
  5. 第8章(4)仏教と儒教の変貌
    1. 密教の誕生
    2. 朱子が大成させた朱子学
  6. 第9章 ルネサンスと宗教改革を経て哲学は近代の合理性の世界へ
    1. ルネサンスの哲学的な収穫
      1. ルネサンスが生まれた背景
    2. ルターのカルヴァンの宗教改革とローマ教会の対抗宗教改革
    3. カルヴァンの予定説
    4. ローマ教会の対抗宗教改革
    5. 哲学は近代の合理性の世界へ
      1. ベーコン「知識は力なり」
      2. 人間が抱える4つのイドラ
    6. 大陸合理論の哲学とは
      1. デカルトの演繹法
    7. 懐疑主義
  7. 第10章 近代から現代へ。世界史の大きな転換期に登場した哲学者たち
    1. カントの哲学
    2. ヘーゲルの弁証法
  8. 第11章 19世紀の終わり、哲学の新潮流をヘーゲルの「3人の子ども」が形成した
    1. キルケゴールの実存主義
    2. マルクスの生産力
      1. 「資本主義は労働を疎外する」
    3. ニーチェ「神は死んだ」
      1. 永劫回帰
      2. 「超人」と「力への意志」
      3. ルサンチマン
    4. フロイトの精神分析学
  9. 第12章 20世紀の思想界に波紋の石を投げ込んだ5人
    1. ソシュール
    2. フッサール
      1. 現象学的還元
    3. ウィトゲンシュタイン
    4. サルトル
      1. アンガージュマン
    5. レヴィ=ストロース

第7章 キリスト教と大乗仏教の誕生とその展開

新約聖書が成立するまで

セム的一神教の三宗教において教典の共通性が見られる理由

セム語族から生まれた一神教のセム的一神教の神はヘブライ語でYHWHと表記されるが、ヘブライ語には母音がないので、呼び方に決まりはない。
そこで、”ヤハウェ”と呼ばれるようになった。
YHWHはセム語族にとって唯一神であり、自分を信じる者は守護しますが信じない者に対しては攻撃性を示す。

旧約聖書と新約聖書

旧約聖書(Old Testament):キリスト以前の預言者と神との契約
新約聖書(New Testament):キリストの言葉や奇跡を弟子たちが書き残したもの

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イエスの教えとパウロの教え

イエスがユダヤ教上層部に蔓延していた堕落を批判していたことは確かだが、詳しいことはわかっていない。

イエスの死後、パウロがイエスの教えを最も体系的に発展させた。
彼はイエスの弟子ではなく、むしろ元々はイエスの教えを迫害するユダヤ教パリサイ派の人物だった
しかし、ダマスカスに向かっている途中で天から光が降り注いできたのでパウロは目が見えなくなってしまった
すると天上からイエスの「何ゆえ私の信徒を迫害するのか」という声が聞こえてきたので、パウロは改心した

改心したパウロはイエスの教えを説こうとするが、すでに活動していたイエスの弟子たちに受け入れられることはなかった
そこでパウロはパレスチナから遠く離れたローマ帝国の辺境でコイネー(当時のギリシャ語で、ヘレニズム時代には第三外国語になった)を用いてイエスの教えを説いた
こうしてユダヤ人居住者以外のエーゲ海周辺に住む人々にもイエスの教えが伝わった
⇒イエスの布教活動を世界宗教として拡大していくことに貢献

新約聖書のはじまり

パウロによってキリスト教がローマ帝国に普及し、イエスの教えを文章にまとめることになり、新約聖書の執筆が始まる

新約聖書は合計27文書になった
→4つの福音書、使徒言行録、パウロの書簡などの21の書簡、黙示録
4つの福音書…マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書記

グノーシス主義

グノーシス…ギリシャ語で「認識」という意味

新約聖書を聖典化する過程で現れた
ドケティズム(イエスの神性のみを認め、誕生や十字架上での死などの人間的な生は仮象だとして受肉を否定する思想でドケチという意味ではない)に立脚
肉体・物質が悪で魂・精神が善だという二元論

初期のキリスト教による布教戦術

イエスの誕生日を冬至に定める

当時はミトラス教が庶民に人気があって、太陽神ミトラスは冬至の時期に生まれていた
なので、信者は冬至の日をミトラスの誕生日に定めてお祝いをした

そこで、キリスト教団はイエスの誕生日を冬至に定めてクリスマスとした
(4世紀に12月25日に定められたが、実際のイエスの誕生日は明らかになっていない)
そして牛肉の代わりにパンを食べ、赤ワインを飲んでお祝いした

イエスを抱く聖母マリア像を作る

ミトラス教のほかにイシス教というエジプトの宗教があって、庶民に人気があった
イシスは大地母神で、我が子を抱いて膝に乗せている像が敬愛を集めていた

キリスト教団はこの像のアイデアを借用して、イエスを抱く聖母マリア像を作った

イエスの顔つきをゼウスから拝借

ギリシャには「万物の支配者」という意味で皇帝の称号としても用いられたパンクラトールという呼称がイエスに与えられたが、その表情はゼウスのようだったという

三位一体説

新約聖書が完成されていく頃、アレクサンドリア教会のアリウスという司祭がある教説を語り始めた

「神は唯一の存在であり、イエスは神の被造物である。すなわち、神とイエスは別々の存在である」
あくまでもイエスの神性は否定せず、神そのものではないという考え方

多くの聖職者たちは「イエスは神の子」であると考えていたのでアリウスの教説に反対し、彼を破門した

しかし「イエスは人の子」というアリウスの主張は諸部族の間で有力になっていった
ローマ帝国を統一したコンスタンティヌス1世はこのキリスト教内部の紛争を見て「イエスは神の子か、人の子か」を議論する場を設けた
アレクサンドリア教会の助祭アタナシウスは次のように主張した:

「神がイエスという人間を借りて受肉したからこそ、イエスへの信仰が成立した。神とイエスが別々の存在であったら信仰は成立しない。だから神とイエスは同質の存在だ。神は人類を原罪から救うために父なる神とイエス、マリアを宿した聖霊という3つの位格を創造したのである。したがってこの3つの位格は3つとも神である」

そして「イエスは神の子である」という説を体系化したのが三位一体説が生まれた

こうして会議の結果三位一体説が採用されアリウス派は異端とされたが、その教えが衰えることはなかった
そこでローマ皇帝テオドシウス1世が再び会議を開き、三位一体説が再確認された

ネストリウス派が異端となった理由

コンスタンティノープルの総主教ネストリウスはマリアは人なのだから神の母と呼ぶのはおかしいと主張した
彼はイエスは神でもあるが、人でもあると考えていた
「人」としてのイエスは十字架にかけられて死んだ時に失われ、復活したイエスには神性だけが残った

しかし三位一体説を支持する司祭たちは猛反発
エフェソスで会議が開かれ、ネストリウス派は異端とされ、ネストリウスは破門された
ネストリウス派は東方で信者を獲得していった
唐では”景教”と呼ばれ、大秦寺という名の教会を各地に建立した

キリスト教の東西分裂

キリスト教内部で、コンスタンティノープル教会とローマ教会の対立が激化、決裂
東方教会とローマ教会に分裂し、1965年まで修復されなかった
このため、修復されるまでの公会議はローマ教会のみによって開催された  

第8章 イスラーム教とは?その誕生・発展・挫折の歴史

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イエスやブッダとは異なり、ムハンマドは普通の人だった

イスラーム教とは

YHWHを唯一神とするセム的一神教
イスラーム教ではYWYHのことを”アッラーフ(アッラー)”と呼ぶ

イスラーム教におけるムハンマドの立場

最後の預言者であり、人間
イスラーム教ではイエスもムハンマドの前に登場した預言者(人間)として位置づけられている
三位一体説のような教説はない

イスラーム教の聖書・クルアーン

クルアーンの原義は「詠唱すべきもの」
ムハンマドが神から託された言葉が書かれている
編纂の中心になったのはムハンマドの友人であり3代カリフのウスマーン
彼はクルアーン完成後、その他の疑わしい神の言葉をすべて焼却した
ハディースという、ムハンマドの言行(スンナ)を記録した言行録もある
イスラーム教の聖典はクルアーンが114章でハディースが6冊
しかし、10世紀以降はシーア派がその6冊とは別に4冊のハディースを聖典としている

天使ジブリールからの言葉を詠唱した文章がクルアーンになったことから、声を出してクルアーンを詠唱することが原則とされている
ムハンマドは生涯アラビア語しか話さなかったので、ムスリムたちはアラビア語でクルアーンを詠唱している
また、神の言葉は唯一無二なので、クルアーンの翻訳は許されていない
(参考文献としての翻訳はOK)

日本語で書かれた新約聖書を読んでいる日本人のキリスト教徒とドイツ語で書かれた新約聖書を読んでいるドイツ人のキリスト教徒が出会っても議論は困難だが、ムスリムは同じアラビア語でクルアーンを学んでいるのでコミュニケーションを取りやすいというメリットがある

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六信五行

イスラーム教には司祭や僧などの聖職者がいないので、八百屋の主人が聖職を兼業することもある

六信五行は「6つのことを信じて5つのことを行動に移しなさい」という教え
「六信」…神(アッラーフ)・天使(ジブリール)・啓典(クルアーン)・預言者(ムハンマド)・来世(天国と地獄の存在)・定命(神の決定)を信じること
「アッラーフが唯一の神であり、ムハンマドが最後の預言者である」と信仰告白すれば誰でも信者になれる
入信後に五行の実践が求められる
「五行」…信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼
礼拝→日に5回、マッカのカアバ神殿の方に向かって礼拝
喜捨→裕福な信者は貧しい人たちに恵みなさいという教え
断食→イスラーム暦の9月に断食する
巡礼→一生の内に一度はカアバ神殿に巡礼しなさいという教え

ムハンマドの生涯

ムハンマドはマッカで生まれた
40歳を過ぎた頃から洞窟にこもるようになる
ある日、洞窟で瞑想しているムハンマドのもとに一人の男(正体はアッラーフに仕える天使ジブリール)が訪ねてきた
男は「私の心の声を聞き、その言葉を詠みなさい」とムハンマドに言った
ムハンマドは詠唱しているうちに瞑想から覚め、男が飛び立っていくのを見た
こうして預言者ムハンマドが誕生し、妻ハディーシャが最初のムスリム(イスラーム教の信者)となった

ムハンマドは神の言葉を伝えようとしたが、多神教を信仰していたマッカの住人は彼の一神教を受け入れなかった
ムハンマドと信者たちはマッカを離れ、マディーナで新たに布教を開始
このムハンマドの移住をヒジュラ(聖遷)といい、イスラーム暦ではこの年を元年としている

ムハンマドの教えはマディーナ全体に浸透していき、彼はマディーナの支配者になる
そして自分を追放したマッカの軍勢と戦い、勝利
イスラーム教の世界を拡大し、アラビア半島の事実上の支配者となった

偶像崇拝の禁止

イスラーム教ではムハンマドを描かない代わりにキブラ(カアバ神殿の方向)を祈りの対象としている

シーア派とスンナ派

世界的にはスンナ派が多数だが、劇的な成立過程を持つシーア派もイランを中心に強い存在感を放っている

スンナ派

スンナ…言行、慣行という意味
クルアーンとハディースに書かれているムハンマドの言葉と行動を慣行として大切にする

シーア派

ムハンマドの死後、アブー・バクル、ウマル、ウスマーンの3人のカリフ(ムハンマドの代理という意味)がイスラーム共同体を継承
しかし、4代目カリフがアリーに決まった時に問題が発生
彼がカリフに選ばれた時のイスラーム支配領域は世界帝国と言っていいほどの広さに達していたのだが、ムハンマドと前のカリフたちはマディーナのカリフの住居で統治を行っていた
⇒支配体制の変化が求められているのに対応策が取られていなかった

前任のウスマーンが反対派の過激分子たちに暗殺された事を受けて、ウマイヤ家のムアーウィヤはアリーにウスマーン暗殺の真相を究明を要求、不可能であれば自分にカリフの座を譲れと申し出た
大反乱の末、二人は和解
しかし過激なハワーリジュ派が反対、二人のもとに暗殺者を送り込む
ムアーウィヤは無事だったがアリーは暗殺されてしまった

やがてアリーの次男フサインのもとに使者がやって来て、アリーの遺志を次いで真のイスラーム帝国を築かないかと提案、フサインはこの提案を受け入れる

しかしこの情報はウマイヤ朝のもとに届き、カルバラーの地でフサイン一族を襲撃
カルバラーの地で没したフサイン一族はムハンマドの血統を正しく引き継いでいるので、すべてのムスリムの宗教的・政治的首長となる権利を与えるべきだと考える人々がシーア派となった

4人妻という考え

クルアーンでは妻を4人まで持つことが許されている
ムハンマドの時代は大半の女性にとっては自立して生きていける時代ではない、という戦乱の時代背景があった
しかし、2人目以降の妻を迎える場合はそれまでの妻の了承が必要で、4人に対して平等に接することが前提となっていた

第8章(2)イスラーム教にはギリシャ哲学を継承し発展させた歴史がある

イブン・スィーナーの画期的な思想

イブン・スィーナーはアッラーフとプラトンやアリストテレスの哲学を理論的に結合させた
彼は「無から有は生じない」のだから、生じさせる何かがあったのだと考えた
そして無から有を生じさせる存在としてアッラーフがいるのだと考えた

イブン・ルシュドの二重心理

イブン・ルシュドは世界には神が存在し、その信仰から得られる真理とアリストテレスのような卓抜した理性が構築したロジックがもたらす真理という2つの真理があると考えた

第8章(3)イスラーム神学とトマス・アクィナスのキリスト教神学との関係

トマス・アクィナスの偉業

トマス・アクィナスは神の本質がわからないので、神の存在証明を神の概念規定から始めることはできないかと考えた
彼は神を第一原因(すべての存在や状態をつくり出す根本の原因となる存在)と名付けた
また、哲学によって理解するこの世の真理と神学によって理解するあの世と宇宙の真理があると考えた
そして哲学の真理を神学の真理の下位に位置づけ、「哲学は神学の端女である」と言った

第8章(4)仏教と儒教の変貌

密教の誕生

密教では大日経の教えと金剛頂経の世俗的な願いを実現させる呪術的な儀式を富裕層中心に布教した
密教を完成させた人々はチベットへ向かい、強い情熱によって中国僧を圧倒
チベット仏教は密教の世界になった

朱子が大成させた朱子学

朱子は「世の中を律する人間の本性と天上界を律する天の理は同じものである」と考え、理気二元論を構想した

また、「格物致知(万物にはそれぞれの理があるので、万物をよく観察し探求すれば、世界全体の理を理解することができる)」

第9章 ルネサンスと宗教改革を経て哲学は近代の合理性の世界へ

『哲学と宗教 全史』の第7章〜第12章の内容メモです。
キリスト教、イスラーム教、ルネサンス時代の宗教改革、近代哲学などが登場します。

ルネサンスの哲学的な収穫

ルネサンスが生まれた背景

ルネサンス…仏語で「再生」という意味
ギリシャ・ローマの古典がイスラーム世界経由でヨーロッパに大量流入してきた

また、ペストの猛威にさらされた人々は「こんなにも儚い人生なのだから、きちんと敬虔に生きよう」という、神にすがる考えを抱いた
逆に「いつペストに感染するかわからないのだから、この人生を楽しく生きようぜ」という、神の手から自分の人生を解放する考え方も生まれた

神にすがるか、神の手を離れるか
ペストの流行は神と人の生き方の関係を考え直させ、ルネサンスの潮流を呼び起こす大きな引き金となった

ルターのカルヴァンの宗教改革とローマ教会の対抗宗教改革

宗教改革は、ローマ教会の世俗化や高級聖職者の堕落、下級聖職者の無教養などに対する批判が嵩じたもの

事の発端は、ローマ教皇レオ10世がドイツで贖宥状を売り出したこと
発売から2年後、神学教授マルティン・ルターが教会の壁面に「贖宥状に対する95ヶ条の論題」を貼り出し、贖宥は神のみが可能だと断言した
ルターの問題提起を契機として、聖職者の在り方に疑問を抱いていた人々はローマ教会を強く批判するようになっていく

事態を重く見た神聖ローマ皇帝カール5世はドイツ諸侯とルターを召集
カール5世はルターに教会を弾劾するのをやめるように迫ったが、ルターは拒否
カール5世はヴォルムス勅令を出し、ルターを法の保護外に追放した
しかしザクセン選帝侯がルターを匿い、身の安全を保証されたルターは聖書のドイツ語への翻訳作業に取り掛かる
教会を批判する声と聖書に帰れという声が瞬く間に広がった

カルヴァンの予定説

ジャン・カルヴァンは聖職者も一般市民も、すべて聖書や法律の前では平等であると考え「魂の救済を得られる人は、あらかじめ神によって定められている」という予定説を主張した

ローマ教会は生きているうちに善行を積み重ねて最後の審判に合格しなさいと教えていたが、善行を積んだかどうかを誰が判断するのかと言うと、ローマ教皇である。
そうなると教会に土地を寄進したりお布施を多く喜捨することが「善行」となる
ところが、生まれる前から死後の運命が決まっているのであればそれらの善行は何の訳にも立たない

この予定説は商業や工業に携わる人々の間に浸透し、知識階級の人々を中心にカルヴァン派が増えていった

ローマ教会の対抗宗教改革

イングランド王ヘンリー8世が国王至上法を発布、イングランド教会の最高権力者がイングランド王となる

ローマ教会は対抗宗教改革に立ち上がり、ローマ教皇庁も事態を修復するためにトリエント公会議を開催しローマ教会はプロテスタントへの対抗策を強化した

カール5世はアウグスブルクに帝国議会を召集し、ルター派の処遇について議論した
ルターの宗教改革に対する支持層が圧倒的に増加していたため、ルター派を認めざるを得なかった
こうして、ルター派を信仰する自由が認められるようになった(「アウグスブルクの和議」)

哲学は近代の合理性の世界へ

ベーコン「知識は力なり」

フランシス・ベーコンは帰納法を体系づけた
→ある事象について数多くの観察や実験結果を集め、共通する事実から原理や法則を導き出す
神が介在する隙がなく、現実世界の事実だけから論証する
ベーコンの帰納法に始まるイングランド哲学の流れを経験論という

人間が抱える4つのイドラ

ベーコンは、人間には偏見や先入観に囚われがちな性質がある事を警告
4つのイドラ(種族・洞窟・市場・劇場)に気をつけろと言った

大陸合理論の哲学とは

デカルトの演繹法

演繹法…前提となる命題を置き、経験に頼らず理論的な展開によって一定の結論に到達しようとする論法

懐疑主義

何事によらずすべてを疑い、いかなる判断をも保留して一切断定しない哲学の立場

デカルトは神を中心とした世界に代わる新しい真理が支配する世界を作ろうとして、懐疑主義からの脱却を目指した
そこで、疑うことを方法論にすることを考えすべてを疑いの網にかけた
世界に確実な存在はないが、すべてを疑っている自分は常に確実に存在している
⇒「我思う、ゆえに我あり」

第10章 近代から現代へ。世界史の大きな転換期に登場した哲学者たち

カントの哲学

カントは、人間には感性と悟性(知性)から成る2つの認識方法があると考えた
人は自分の感性と悟性で構成される認識の枠によって対象を見ているにすぎない
人が見ているのは真の対象そのものではなく、認識の枠が捉えた現象

ヘーゲルの弁証法

存在はすべてテーゼ(正)とアンチテーゼ(反)を内包し、対立と運動を続けてジンテーゼ(正反合)に至り、アウフヘーベン(止揚)する

人間の精神活動も正・反・正反合の止揚を繰り返しながら進歩していき、最後には人間精神の最高段階に達して「絶対精神」を獲得する

第11章 19世紀の終わり、哲学の新潮流をヘーゲルの「3人の子ども」が形成した

キルケゴールの実存主義

人は自らの「主体的な真理」を求めて生きるべきであり、優先されるべきは全体的な進歩ではないと主張した

美的実存…美しい恋人やおいしい食べ物を求めて生きる
しかし、この生き方は長続きしない
倫理的実存…人のために生きることを大切にする
しかし、偽善的な行為と紙一重でもある

そうなると最終的に行き着くのは「宗教的実存」である
神を一度否定した後に、人は理性を越えた神の存在を信じ、改めて自らの心を神のもとに投じる

マルクスの生産力

マルクスは、世界を進歩させるのは絶対精神のような観念ではなく物質だと述べた
物質=社会の経済構造が生み出す生産力指している

「資本主義は労働を疎外する」

マルクスは、資本主義社会ではブルジョワジー(有産者階級)が生産手段を独占していると考えた
ブルジョワジーは労働の付加価値を高めようとする
→労働量を増やすために、労働者を長時間に渡り安い給料で働かせようとした
⇒搾取

酷使されるだけでブルジョワジーとの格差は広がる一方
マルクスは、プロレタリアートが階級闘争に勝利すれば生産手段が公有化されて社会主義国家となり、社会主義国家が世界的に勝利して次の段階に進めば共産主義の世界になると述べた

ニーチェ「神は死んだ」

「神は死んだ」
→世界に絶対的なものはなにもないと考えるとニヒリズム(虚無主義)に陥る
けれど、神は死んだという事実を受け入れて前を向いて生きていくという、能動的な姿勢でニヒリズムを受け入れる人もいる

永劫回帰

ニーチェは、歴史は永劫回帰する円環的時間だと考えた

「超人」と「力への意志」

超人…永劫回帰を受け入れて頑張っていく人間

また、ニーチェは人間が強く生きようとした時に最も大切にするものは力への意志であると考えた

ルサンチマン

ルサンチマン…怨恨・憎悪・嫉妬などの感情が反復され、内攻して心に積もっている状態
主に弱者が強者に対して抱く感情
ニーチェは、キリスト教は支配層や富裕層の圧政に苦しむ人々が抱いているルサンチマンを巧みに利用し、受動的なニヒリズムに陥らせていると批判した

フロイトの精神分析学

フロイトは、人間を動かしているのは脳の無意識の領域ではないかと考えた

第12章 20世紀の思想界に波紋の石を投げ込んだ5人

ソシュール

ソシュールは、すべての言語は記号の体系ではないかと考えた
さらに、世界のそれぞれの言語を話す人々は、眼前に広がる世界を自分なりに整理して記号を付け、さまざまな実体要素を認識していると考えた

フッサール

現象学的還元

「なぜペットボトルがあると確信できるのか、その根拠はなにか」を追求していく論理
触れるとペットボトルがあるとわかる→知的直観
ペットボトルがプラスチックで作られていて、水が入っているという知識→本質直観
知的直観と本質直観によってペットボトルがあるとわかる

ウィトゲンシュタイン

ウィトゲンシュタインは、世界は言語によって写し取られたものであり、我々が認識している世界は言葉がなければ認識できないと考えた

また、言語には日常言語(普段の会話に出てくる言葉)と科学的な言語(具体的で科学的、合理的な言葉)の2つの性格があると考えた

サルトル

サルトルは「実存は本質に先立つ」と考えた
神が存在しているのなら世界の本質や人間の本質を決定するのは神だが、神が存在しないとすれば、人間は物体として生まれ、成長に伴いさまざまな事を学んで人間の本質についてあれこれと考え始める
→人間は自由な実存として存在していると考えた

アンガージュマン

人間は自分の置かれている状況に拘束されて生きているが、その現実に対して主体的に行動することは可能である。その事は人間の実存の本質を変革することにも繋がるとサルトルは考えた
そして自由な個人が主体的に行動を起こして、社会と自分自身の変革を実現させることをアンガージュマンと表現した

レヴィ=ストロース

レヴィ=ストロースは、人間は社会構造の中でそこに染まって生きるものだと考えた