陰陽道

十干十二支の成り立ちと意味(例題付き)

十干十二支

十干

十干は五行(木・火・土・金・水)をそれぞれ陽と陰に分け、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の十個にしたものである。
『五行大義』によると、「干」は物事がまっすぐに竿の上に立っているようにはっきりしていることを意味していたが、書きやすいように「干」が多く使われるようになった。
『簠簋内伝』では、盤牛王の子・青帝青龍王と金貴女との間に生まれた十人の皇子を指す。十干はそれぞれ五行に配当されている。

十干では、字の最後が「え」で終わる甲丙戊庚壬を陽となし、最後が「と」で終わる乙丁己辛癸を陰としている。(『五行大義』)

『簠簋抄』における記述

十干

『五行大義』によると、十干の「干」が元は「竿」だったように、分けられた十干にもそれぞれ元となる漢字がある。

貿

甲・乙

甲は「押」を意味する。甲は春になれば開き、冬になれば閉じる。
後漢の鄭玄じょうげん(127-200)は『礼記』月令の注釈で甲は抽であると述べている。

甲は「押」を意味する

乙は「軋」を意味する。春になると万物はみな殻を破り、自ら軋みつつ抜け出す。

乙は「軋」を意味する

『簠簋抄』における記述は以下である。
木属性の甲・乙は金と相克するため、金と関係のあるものは使わない。

甲・乙
五行
方位
本地(仏)薬師如来
本地(明王)降三世
本地(天部)夜叉
人体肝臓・胆腑
吉事・仏事、祭礼、婚姻
・薬を飲む
・裁縫
・出行する
・自分に従う者を求める
・動物を求める
凶事・財産を納める
・倉を開ける
・木を切る
・剣を求める
・鍼灸による治療
・牛馬の治療

薬師如来は衆生の悲母であるため、婚姻や裁縫をすると喜ぶ。万物は東方より生まれ繁昌するので、出行も吉。
蔵に財を納めるのは母の薬師如来の胎内に納まることと同じであるため、倉は開けないほうがよい。
木を切ってはいけないのは、木は薬師如来であるため、木を切ることは薬師如来を切ることと同じだからである。
剣を求めてはいけないのは、剣は人を殺める物であるため、薬師如来に不孝をはたらくことになるからである。
鍼灸による治療をしてはいけないのは、鍼灸は身体を傷つけ草木を切るものであるため、薬師如来を切ることと同じだからである。

丙・丁

丙は「炳」を意味する。物が成長するとき、それぞれその柄を取ることに由来する。
鄭玄は、夏になると万物は強大になり、炳然としてはっきり形を現すことから丙は「炳」であると述べている。

丙は「炳」を意味する

丁は「亭」を意味する。物事が成長していく途中で停まろうとするようなものである。

丁は「亭」を意味する
丙・丁
五行
方位
本地(仏)観音菩薩
本地(明王)軍荼利
本地(天部)夜叉
人体心臓・小腸
吉事・出行する
・調伏する
・弟鷹を鷹狩りの鷹として用いる
・牛馬の売買
・馬に乗り始める
・牛馬の脚力を求める(この日は馬を納めない)
凶事・家を建てる
・葬式を行う
・竈神を祀る
・屋移をする
・温病の治療をする
・船や筏に乗る
・海や川を渡る
・田畑を耕す
・井戸を掘る

戊・巳

戊は「貿」を意味する。成長が極まると、貿易をするかの如く以前の体との入れ替えをすることに由来する。
鄭玄は、万物はみな枝葉が茂って盛んになり、優れたものは他のものに抑えつけられても姿を現すことから、戊は「茂」であると述べている。

戊は「貿」を意味する

己は「紀」を意味する。物事がはじめて成就したとき、必ず条紀(筋道)があることに由来する。

己は「紀」を意味する
戊・巳
五行
方位中央
本地(仏)大日大聖如来
本地(明王)不動明王
人体脾臓・胃
吉事・親孝行する
・師長に仕える
・結婚する
・五穀の収穫
凶事・田畑を耕す
・穴を掘る
・葬儀を行う
・諸病を治療する
・病人と会う
・死人を弔う
・逆修を行う
・財宝を求める
・兵具を造る
・合戦をする
・針を立てる
・衣を裁つ

庚・辛

庚は「更」を意味する。万物の生まれ変わりに由来する。

庚は「更」を意味する

辛は「新」を意味する。万物が成長して新たに生まれ変わることに由来する。

辛は「新」を意味する
庚・辛
五行
方位西
本地(仏)阿弥陀如来
本地(明王)大威徳
本地(天部)夜叉
人体肺・大腸
吉事・城を攻める
・合戦
・鷹匠
・川で漁をする
・山中で狩猟する
悪事・六畜を求める
・従者を買う
・刀を売る
・兵具を求める
・衣を裁つ
・酒を造る
・薬を調合する
・鍼灸を行う
・出行する
・出陣する
・養子を求める
・折檻をする
・五穀を取る
・家・厩を建てる

壬は「任」を意味する。

壬は「任」を意味する。陰が陽をはらみ、揆然として物を萌芽していることに由来する。

癸は「揆」を意味する

癸は「揆」を意味する。由来は壬に同じ。

壬・癸
五行
方位
本地(仏)釈迦如来
本地(明王)金剛
本地(天部)夜叉
人体腎臓・膀胱
吉事・家、厩を建てる、門を立てる
・薬を飲む
・出行する
凶事・水の流れを止める
・井戸や河原小屋を撤去する
・橋をかける
・船に乗り始める
・病人を看病する
・死者を弔う
・衣を染色する

十二支

『簠簋内伝』では、盤牛大王と二番目の妻である陽専女の息子・赤帝赤龍王と愛昇炎女との間に生まれた十二人の皇子が十二支になったとされている。

元々、十二支は動物とは関係なかったが、秦・漢代になって動物と結び付けられるようになった。

十干と同様に、十二支も陰陽に分けられる。寅辰午申戌子を陽となし、卯巳未酉亥丑を陰となす。(『五行大義』)

十二支陰陽

十二支

子は「孳(生む・茂る)」を意味する。陽気が動き出し、万物が芽生える。

子は「孳(生む・茂る)」を意味する
動物鼠(ねずみ)
五行
本地釈迦如来
十二神将毘羯羅大将
吉事・出行する
・人と会う
・元服する
・井戸や穴を掘る
・財を求める
・入学する
・登山する
凶事・建物を建てる
・財を納める
・結婚する
・五穀を刈る
・精米

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名困敦(こんとん)
〈陽気が混沌として、万物が芽生える〉
旧暦十一月
地雷復

丑は「紐」を意味する。「子」で芽生えて成長していったものを紐で縛る。

丑は「紐」を意味する
動物
五行
本地普賢菩薩
十二神将招杜羅大将
吉事思い切って何かをする
凶事何もしてはいけない(特に食い初めはよくない)

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名赤奮若(せきふんじゃく)
〈万物が陽気に奮迅されて起こり、その性質に従うこと。赤は陽気の色である。〉
旧暦十二月
地沢臨

寅は「移」あるいは「引」を意味する。
淮南子によると、寅は螾動して生じるという。

動物
五行
本地薬師如来
十二神将真達羅大将
吉事・外出・旅行は大吉
・合戦をする
・堂塔を建てる
・願い初め
凶事・衣を裁つ、染める
・結婚する
・狩猟

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名摂提格(せっていかく)
〈万物が陽気を受けて起こる〉
旧暦一月
地天泰

卯は「冐」を意味する。物が成長し、地を覆冐する。
淮南子や三礼義宗によると、卯は「茂」だという。

動物兎(うさぎ)
五行
本地金剛手菩薩
十二神将摩虎羅大将
吉事・元服する
・出仕する
・人と会う
・外出する
凶事・結婚する
・井戸や泉を掘る
・女の家に通う

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名単閼(せんあつ)
〈陽気が万物を推し、陰気が尽く止まる〉
旧暦二月
雷天大壮

辰は「震」を意味する。著しく震動し、元の体から抜け出す。

辰は「震」を意味する

辰の日は、龍神を祀る。

動物
五行
本地文殊菩薩
十二神将波夷羅大将
吉事・財を納める
・蔵を建てる
・田植え、種を蒔く
凶事・船に乗り始める
・家、柱を建てる
・病人を見る
・死者を弔う

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名執徐(しつじょ)
〈土に隠れていたものが皆地上に出てくる〉
旧暦三月
沢天夬

巳は「巳」を意味する。元の体が洗われ、已に終わってしまう。

巳は「巳」を意味する
動物
五行
本地地蔵菩薩
十二神将因達羅大将
吉事・弓を始める
・宇賀神を祀る
・日天の修行をする
凶事・外出する
・諸国を巡る
・家を建てる

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名大荒落(たいこうらく)
〈万物が大いに栄え、広く布散する〉
旧暦四月
乾為天

午は「仵」を意味する。万物の枝が入り交じり、盛んに伸びている。

午は「仵」を意味する
動物
五行
本地栴檀香仏
十二神将珊底羅大将
吉事・出陣する
・外出する
・財を納める
・蔵を建てる
凶事・財を求める
・食い初め

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名敦䍧(とんそう)
〈万物が盛壮であること〉
旧暦五月
天風姤

未は「昧」を意味する。

未は「昧」を意味する
動物
五行
本地摩利支天
十二神将安爾羅大将
吉事・兵法を行う
・修行する
凶事上記以外すべて

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名協洽(きょうこう)
〈万物が和合する〉
旧暦六月
天山遯

申は「伸」を意味する。

申は「伸」を意味する
動物
五行
本地得大勢菩薩
十二神将安底羅大将
吉事・神事を行う
・厩を造る
・牛馬に関する商売を行う
凶事・三宝(仏・宝・僧)に関することを行う

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名涒灘(とんだん)
〈万物が精気を修める〉
旧暦七月
天地否

酉は「老」あるいは「熟」を意味する。

動物
五行
本地無量寿仏
十二神将迷企羅大将
吉事・奉行人を務める
・官位を授かる
凶事・嫁を取る

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名作鄂(さくがく)
〈万物が落ちること〉
旧暦八月
風地観

戌は「滅」あるいは「殺」を意味する。

戌は「滅」あるいは「殺」を意味する
動物
五行
本地大聖不動明王
十二神将伐折羅大将
吉事・出仕する
・人と会う
・結婚する
・奉行人を務める
・公事を行う
凶事上記以外すべて

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名閹茂(えんぼう)
〈万物が覆い隠されること〉
旧暦九月
山地剥

亥は「核」を意味する。

亥は「核」を意味する
動物
五行
本地弥勒菩薩
十二神将宮毘羅大将
吉事思い切って何かをする
凶事すべて

『五行大義』『万暦大成』の記述。

別名大淵献
〈万物が伏して陽気を迎える〉
旧暦十月
坤為地

十二支の相性

十二支沖(衝)

十干十二支と暦

十干より十二支の方が二つ多いので、十二支が一周する二つ前に十干が一周するので、数が足りなくなる。

十干十二支と暦

そのため、十二支が一周する前に十干の二周目が始まる。

十干十二支と暦

例1:小右記の場合

天元五年(982)1月1日~1月10日

日付十干十二支
1月1日甲午
1月2日乙未
1月3日丙申
1月4日丁酉
1月5日戊戌
1月6日己亥
1月7日庚子
1月8日??
1月9日壬寅
1月10日癸卯

1月8日の十干十二支は?

前日(7日)の十干が「庚」、十二支が「子」なので、8日の十干十二支は「辛丑」ということになる。

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