源氏物語:第一部(桐壺~藤裏葉)のあらすじです。
源氏物語
1: 桐壺
あらすじ:帝が寵愛していた桐壷の更衣が亡くなる、更衣そっくりの藤壺が入内する
+ 『桐壷』のあらすじ
どの帝の御代であったか、大勢の更衣や女御が仕えていたなかで、桐壺の更衣は帝から一際寵愛を受けていました。桐壺は他の女御たちからひどく妬まれたせいで体調を崩し、病気がちになってしまいました。しかし、桐壺にはしっかりとした後ろ盾もなかったので、帝の寵愛にすがるしかありませんでした。
やがて、桐壺と帝の間に光り輝くような皇子が生まれました。帝には右大臣の娘である女御が生んだ皇子がいましたが、桐壷の皇子の美しさにはとても敵わないので、女御の心中は穏やかではありませんでした。その後も、桐壷は女御たちから数々の嫌がらせを受けました。その年の夏、病を患った桐壷は帝に里帰りを申し出ましたが、帝は側から離そうとしません。桐壺の病は日に日に悪化して、とうとう亡くなってしまいました。帝は悲しみに暮れて何につけても桐壺を思い出し、政もおろそかになっていきました。年月が過ぎるほど帝の桐壺への思いは募り、なんとか気を紛らわそうとしましたが、桐壺ほどの人はいませんでした。その頃、皇后御所に藤壺という姫宮は亡き桐壷にそっくりだと聞いた帝は、藤壺を入内させることにしました。桐壺と違い、藤壺は身分が高いので誰も彼女を悪く言うことはできませんでした。また、桐壷の皇子は他と比べようもないほど美しく成長して源氏の君となり、世間の人々から「光る君」と呼ばれました。
2. 帚木
あらすじ
+ 『帚木』のあらすじ
雨の日の夜、源氏は頭中将と優れた女性とはどのようなものか議論を繰り広げていると、左馬頭と藤式部丞が参入してきました。左馬頭は、自分の妻とする女性は、地味で大人しく、嫉妬しない人が良いと言いました。昔、まだ身分の低かった左馬頭には意中の女性がいましたが、その女性は左馬頭が隠れて浮気していたのをひどく嫉妬していたので、左馬頭は煩わしく思いました。言い争いの末に二人は別れ、お互いに意地を張り合っているうちに女性は悲しみのあまり亡くなってしまいました。同じ時期に付き合っていた別の女性は他の男と浮気していたことがわかって別れました。
頭中将には密かに通っていた女性がいましたが、妻から疎まれてその女性は姿を消してしまいました。女性の行方は未だに分からず、頭中将は今でも思い出して苦しんでいます。
藤式部丞は文章生だった頃、博士の女性と親しくしていましたが、女性が服用していたにんにくの匂いに耐えられず逃げ帰りました。
翌日、源氏は方違のために紀伊守の家を訪ねました。源氏は伊予介の後妻(空蝉)の噂を聞いて心惹かれ、夜目が覚めると彼女の寝所に忍び込み、一夜を共にしました。帰宅した後も源氏は後妻を忘れられず、空蝉の弟である小君を仕えさせることにしました。その後も源氏は後妻へ手紙を送りますが、良い返事はありませんでした。源氏は、彼女のつれなさを近づけば姿を消してしまう帚木に例えるのでした。
3. 空蝉
あらすじ
+ 『空蝉』のあらすじ
後妻からの便りはなく、彼女をどうしても忘れられない源氏は、小君になんとかもう一度逢わせてほしいと頼みました。小君も子供心ながらあれこれと工夫して、紀伊守が任国へ出かけているときに源氏を後妻の家に連れていきました。そこでは、後妻と継娘が碁を打っていました。源氏は二人の様子をじっと見た後、気づかれないように外へ出ました。その頃、後妻もまた源氏は自分を諦めてくれたのだろうと思おうとしますが、あの夢のような一夜を忘れられずにいました。ちょうどそこへ源氏が近づいてくる気配がしたので、後妻は単衣を一枚残してその場から抜け出しました。源氏が部屋に入ると一人だけで寝ている女性がいたので、ほっとして近づきました。しかし、よく見るとその女性は別人でした。源氏は落胆しましたが、人違いだと感づかれてはまずいし変に思われるだろうと思案を巡らせました。目が覚めた女性は驚きましたが、特に拒む様子もなかったので、源氏は彼女と契りました。源氏が目を覚ますと、年老いた女房がそこにいるのは誰だと尋ねてきたので、小君が自分だと答えました。老女は他にも人がいることに気づきましたが、別の人と間違ってそのまま喋り続け、しばらくして帰っていきました。源氏も小君と車に乗って帰りました。源氏は後妻に深く嫌われていることを実感して、自分のことも嫌いになってしまいそうな心地でした。なかなか眠りにつけない源氏は紙と筆をとって、後妻が残していった単衣を蝉の抜け殻(空蝉)に例えた文章を書きました。そうして、源氏は密かに持ってきた空蝉の小袿をいつも側に置いて見ていました。空蝉もまた、儚い蝉のような身の自分は人目を忍んで涙で袖を濡らしていると嘆きました。
4. 夕顔
あらすじ
+ 『夕顔』のあらすじ
源氏は重病を患って尼になった大弐の乳母を見舞おうとして、彼女の家に向かいました。しかし、正門は閉ざされていたので、従者に惟光を呼びに行かせました。その間、乳母の隣家に女性たちの人影が見えました。物珍しく思った源氏が車の窓から顔を出して見てみると、夕顔が咲き誇っているのが見えたので、随身に一房取って来るように命じました。門が開いて、源氏は車を門の中に入れて尼君を見舞いました。病気平癒の祈祷などを始めるように命じた後、源氏は惟光に尼君の隣家について尋ねましたが、惟光は尼君の看病に専念しているため、隣の家のことまでは分からないと答えました。そこで、源氏が家番に尋ねると、この家は揚名介の家で主人は地方に下っており、年若い妻がいて宮仕えをしている姉妹がよく訪ねてくると答えました。源氏は、隣家の住人のことが気になって仕方ありませんでした。
数日後、惟光が来て隣家にとてもきれいな人が手紙を書いているのが見えたと報告してきたので、源氏はその女性のことをもっと知りたいと思いました。それから、惟光は尼君の見舞いに行くついでに隣家を覗き、中の様子を源氏に報告しました。源氏は隣家の様子を聞いて、雨夜の品定めの際にに左馬頭が蔑んでいた下流階級の中にも、素晴らしい女性がいたのだと感心しました。その後、惟光は工夫の限りを尽くして源氏と隣家の女(夕顔)を引き合わせました。そうして、源氏と夕顔は逢瀬を交わし、来世も一緒だと約束しました。夕顔は素性を明かしてくれませんでしたが、逢瀬を重ねるうちに大胆になっていきました。
ある日の夜、源氏が夕顔を連れ込んで寝入ったところ、源氏は夢の中で枕元に立っている女が「私のところには来てくれないのに、こんな取り柄のない女と可愛がるのはたまりません」と言って、夕顔を起こそうとしているのを見ました。源氏がはっと目を覚ますと燭台の灯火が消えていたので、不気味に思いました。源氏は夕顔を起こそうとしますが、夕顔はすでに息絶えていました。やがて惟光が参上すると、源氏はほっとして涙を堪えきれなくなりました。源氏と惟光は夕顔の亡骸を東山の寺に移し、葬儀を行いました。その後、源氏は夕顔に仕えていた女房・右近から夕顔が頭中将の側室だったことを打ち明けられました。しかし、北の方に嫉妬されて尼君の隣家に引っ越したのでした。源氏は、頭中将と夕顔の娘を形見として預かることにしました。
5. 若紫
あらすじ
+ 『若紫』のあらすじ
ある時、瘧病にかかった源氏はあらゆる加持祈祷をさせましたが、効験が見られず熱が下がりませんでした。そこへ、ある人から北山の某寺に優れた行者がいると聞いて、源氏は四、五人の従者を連れてこっそり出かけました。源氏たちが北山から外の景色を眺めていると女性たちの姿が見えたので、いろいろな噂話をしました。
暇になった源氏が小柴垣の家を覗きに行くと、可愛らしい少女が走ってくるのが見えました。その少女は想いを寄せていた藤壺によく似ていたので、源氏は彼女から目が離せませんでした。庵室へ戻った源氏は、なんとかして彼女を自分の側に置きたいと強く思いました。僧都の房で説法を聞いていた源氏は、少女が藤壺の兄兵部卿宮の娘で、母が早くに亡くなったので北山の尼君のもとで育てられていたことを知ります。源氏はますます少女に逢いたくなって尼君に少女の世話役を申し出ますが、あまりに年が離れているので本気にされませんでした。
一方、藤壺は病気のため里帰りしていたので、源氏は王命婦に頼んで藤壺と逢瀬を交わしました。藤壺は源氏の子を妊娠し、源氏は命婦に逢瀬を頼みましたがどうにもなりませんでした。
その後、北山の尼君は病気で亡くなりました。あの姫君が心配になった源氏は、彼女のもとを訪れて一緒に寝ようとしました。乳母に制止されましたが、源氏は何もしないと言いました。その日の夜は激しい霰が降っていたので、源氏は姫君の側に寄ろうとして御帳台の中に入りました。女房たちも源氏が姫君の側にいるのを見て安心しました。風が静まったところで源氏は帰りました。その後、源氏は惟光ともに姫君の家に行き、姫君を抱きかかえて二条院に連れて帰りました。姫君も最初は戸惑っていましたが、一緒に暮らしているうちにすっかり源氏に懐いてしまいました。源氏も、姫君のことを他の女性たちとは違っておもしろい娘だと思うのでした。
6. 末摘花
あらすじ
+ 『末摘花』のあらすじ
大輔の命婦から亡き常陸の親王が可愛がっていた姫君が父に先立たれて心細く暮らしていると聞いた源氏は興味をもち、姫君にとって唯一の話し相手である琴の音色を聞きに行きました。源氏はもう少し近くで姫君を見たいと言いましたが、命婦に制止されました。その後、源氏は姫君の様子を聞こうと物陰に立ち寄ったところで頭中将の姿を見つけました。二人は姫君に手紙を遣りましたが、返事はありません。姫君のそっけない態度に源氏は心休まらず、腹立たしい気持ちにさえなりました。実のところ、姫君はとても恥ずかしがり屋な性格ゆえに手紙をもらっても読んでいなかったのです。命婦に勧められて姫君と源氏は対面を果たしましたが、姫君の恥ずかしそうな様子を見て源氏は気の毒に思い、夜が明ける前に帰りました。暗闇でよくわからなかったので、源氏は明るいときに姫君を見ようと寝殿を覗きに行きました。しかし、そこに現れた姫君はまるで象の鼻のようにのっぺりとして、先端が垂れて赤味がかかっている鼻をしていました。源氏は驚き、なんてみっともないと思いましたが、それでも物珍しい姫君の姿が自然と気になってしまうのでした。姫君の可哀想な暮らしぶりを目にした源氏は、下心なしに手紙や衣類を送ったりして生活を援助しました。年が暮れて、姫君から手紙が届きました。ひどい出来の和歌に源氏は幻滅しましたが、おもしろい歌と思い直して返事を書きました。正月の節会が終わった後、源氏は再び姫君を訪ねました。姫君の横顔からは、あの末摘花のように赤い鼻が見えました。二条の院では若紫が絵を描いていたので、源氏はその横に赤鼻の姫君を描き、自分の鼻にも紅をつけてふざけ合うのでした。
7. 紅葉賀
あらすじ
+『紅葉賀』のあらすじ
朱雀院の行幸に向けて宮中では試楽が行われ、源氏は青海波を舞いました。その美しさを危険に思った帝は、諸寺に命じて誦経させました。明くる年、藤壺は男子を出産しましたが、その顔は源氏に瓜二つでした。源氏はなんとかして若宮の顔を見たいと命婦に頼みましたが、取り次いでもらえませんでした。
帝に仕えている女官の源典侍はたいへんな好色家という噂だったので、源氏は彼女に声をかけてみたところ、色気たっぷりの返事が返ってきました。源氏が源典侍の家に泊まっていた夜のこと、何者かがそっと入ってくる音が聞こえました。完全に寝入ってはいなかった源氏はその音を聞きつけ、修理の大夫が来たのだと思って屏風の後ろに隠れました。侵入者はわざと大きな音を立てながら近づいてきたので、源典侍も怯えました。それから侵入者は太刀を引き抜いたので源氏が応戦しようとすると、相手は頭中将だと気づきました。二人がふざけてつかみ合っているうちに、お互いの衣服はぼろぼろになってしまいました。源氏は、色事に夢中になっているとこのようになってしまうのだと自省しました。その後、藤壺の立后がありましたが、弘徽殿女御を差し置いて藤壺を立后にするとは何ということだと人々は噂しました。源氏も参議に昇進しましたが、藤壺は雲の上の存在になってしまったことを痛感しました。
8. 花宴
あらすじ
+ 『花宴』のあらすじ
紫宸殿において桜の宴が催されることになり、弘徽殿女御は藤壺が上座にいることを不快に思いましたが、じっとしてもいられず参上しました。宴が終わって源氏が藤壺を探して弘徽殿の細殿に立ち寄ると、三番目の戸口が開いていました。源氏がそっと部屋を覗くと、若くて美しい女性の声で「朧月夜に似るものぞなき……」と口ずさみながら近づいてきました。源氏が女性の袖をつかむと気味悪がられましたが、源氏は彼女をつかまえて戸を閉めてしまいました。