陰陽道

【平安時代】天文密奏と天変地異の吉凶

天文密奏

天文密奏とは、天文・気象に異常が見られた際に天文博士が状況と吉凶を占った結果を天皇に奏上することである。

『史記』=『史記』天官書
『晋書』=『晋書』天文志

いろいろな天変地異

太陽

日蝕

大抵の場合、朔日または晦日に起こる。これらの日以外で日蝕があったときは、陰の気が盛んになって日光を覆ったのである。(『河図占』)

日蝕が起こるのは、君主の政治によくないところがあることを示している。(『晋書天文志』)

日蝕が起こった日は廃務になる。

  • 長徳四年(998)10月1日午の刻、日蝕があった。(『権記』)
  • 長保二年(1000)2月23日辛未の夕方、薄い日蝕があった。→安倍吉昌が天文密奏を奏上した。(『権記』)
  • 同年3月1日戌寅、日蝕があった。藤原行成曰く、日蝕の日は廃務とするのが通例のため結政所に参らなかった。(『権記』)
正月の朝の日蝕

正月の朝の日蝕は年・月・日の三つの朝が重なるので、三朝という。中国の漢代では特に忌み嫌われていた。(『漢書』孔光伝)

乙酉の日の日蝕

乙酉の日に日蝕が起こるのは、君主の立場が弱く、臣下が強いことを表している。(『易占』)

乙酉の日に日蝕が起こった例:長暦三年(1039)12月29日条(『春記』)

黒点

黒点は陰を表す。臣下が君主の悪事を隠すことなく下々の者に見せ、民が君主を嫌うときにこの異変が起こる。また、臣下の中に君主の聡明さを覆い隠す者がいることを表すともいう。(『易占』)

月蝕

月蝕は、最初の五ヶ月に六回、次の六ヶ月に五回、その次の五ヶ月にまた六回、その次の六ヶ月に一回、そして次の五ヶ月に五回、合計百十三ヶ月に渡って起こり、また最初に戻る。ゆえに、月蝕は常に一定の頻度であるが、日食は不定期である。(『史記』)

皆既月蝕は、立派な人、徳の高い人に憂い事があることを表している。また、その国の貴人が亡くなることを表している。(『晋書天文志』)

月に歯が生える

月に歯が生えるのは、天子に賊臣が出て臣下たちが争い合うことを表している。(『晋書天文志』)

月と惑星

月が五星(歳星・熒惑星・鎮星・太白星・辰星)を蝕すと、その国はみな滅亡する。五星が月に入ると、その分野において宰相が追放される。(『晋書天文志』)

月と歳星

月が歳星を蝕すと、その国は飢饉によって滅びる。(『史記』『晋書』)

歳星が月の中に入る(重なる)と、その国の宰相が追放される。(『史記天官書』『晋書天文志』)

月と熒惑星
  • 月が熒惑星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国で兵乱が起こる。
    『晋書』:その下の国は兵乱によって滅びる。

月が熒惑星を犯すと、貴人が亡くなる。(『晋書天文志』)

【中国の例】景初元年(237)10月丁未の日に月が熒惑星を犯し、翌年4月に司徒の韓既が薨去した。(『晋書天文志』)

月と鎮星
  • 月が歳星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国で、下の立場に置かれている者が上の者を犯す。
    『晋書』:その下の国は殺生によって滅亡する。
月と太白星
  • 月が太白星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国は強国によって戦敗する。
    『晋書』:その下の国は強国との戦いによって滅びる。

月と太白星が近づくと、その国は戦いに敗れる。(『史記天官書』)

太白星が月の中に入ると、将軍が殺される。
戊寅の日に月が太白星を犯し、占いによると「人君が死に、兵乱が起こる」となった。(『晋書天文志』)

郭璞の説によると「月は易の八卦において坎に属し陰気や法を象っている。太白星が月を犯すのは刑罰が道理を失っており、法を損なっているということである」。(『晋書天文志』)

月と辰星
  • 月が辰星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国で女乱が起こる。
    『晋書』:その下の国は女性に関係した兵乱によって滅びる。

月と星

  • 月が大角星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国の君主はこれを嫌う。
  • 月が心星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国で内乱が起こる。
  • 月が列星を蝕す(覆う)
    『史記』:その下の国で憂い事がある。

五星

木星歳星
火星熒惑星
土星鎮星
金星太白星
水星辰星

星の合犯

星同士が0.7度以内の位置にいることを「犯」、0.8度以上離れた位置にいることを「合」という。
星同士が近づくほど災いは大きくなる。七寸以内に近づいた場合は、必ず災いが起こる。(『晋書天文志』)

五星が一ヶ所に集まると、その国の王は天下の人々を従える。
三つの惑星が集まるのを驚立絶行といって、その国の内外で兵乱や喪事がある。民衆は飢饉に苦しみ、王者を交代させる。
四つの惑星が集まると、その国で兵乱と喪事が起こる。君子には憂い事があり、小人は流亡する。
惑星が大きく見えるほど、その規模も大きくなる。(『晋書天文志』)

五星が正しく運行していれば、年穀も豊かに実る。(『晋書天文志』)

歳星(木星)

東方にある惑星で、春を司る。
歳星の動きが早いときは、その国に兵乱があって回復しない。遅いときは、その国に憂い事があって将が亡び、国が傾き敗れる。(『史記天官書』)

歳星は君主の象徴である。
歳星の進退が度数通りであれば、邪悪はおさまる。動きが乱れていれば、君主に福がない。
赤く角ばっているとその国は繁栄し、赤黄色で沈んでいるとその国は大豊穣になる。(『晋書天文志』)

歳星に従って惑星が集まるときは、義を以て天下の人々を従える。(『史記天官書』『晋書天文志』)

政治が穏やかなときは動かず、危険が迫っているときは過分に進む。逆行したときは占わなければならない。(『晋書天文志』)

摂提格(寅年)のとき、歳陰は左を運行して寅に在り、歳星は右に転じて丑にいる。正月に斗星・牽牛星とともに東方に現れる。これを監徳という。蒼々とした色の光を放っている。その順序ではないときの兆しは、柳星に見える。時期が早ければ水害が起こり、遅ければ干ばつが起こる。
単閼(卯年)のとき、歳陰は卯に在り、歳星は子に居る。二月に婺女(ぶじょ)星・虚星・危星とともに明け方に現れる。これを降入という。大いに光り輝いている。その順序でないときは、張星に兆しが現れる。その年は洪水がある。
執徐(辰年)のとき、歳陰は辰に在り、歳星は亥に居る。三月に営室星・東壁星とともに明け方に現れる。これを青草という。その順序でないときは、軫星(しんせい)に見える。
大荒駱(巳年)のとき、歳陰は巳に在り、歳星は戌に居る。四月に奎星・婁(ろう)星とともに明け方に現れる。これを跰踵(へんしょう)という。熊熊とした赤色で光を放っている。その順序でないときは、亢(こう)星に見える。
敦牂(午年)のとき、歳陰は午に在り、歳星は酉に居る。五月に胃星・昴星・畢(ひつ)星とともに明け方に現れる。これを開明という。炎炎としており、光を放っている。王公には兵を偃せるのに有利で、兵を治めるのには不利である。その順序でないときは、房星に兆しが見える。早ければ干ばつが起こり、遅ければ水害がある。
汁洽(未年)のとき、歳星は未に在り、歳星は申に居る。六月に觜觿(しけん)星・参星とともに明け方に現れる。これを長列という。昭昭として光を放っている。兵を用いるのに有利である。その順序でないときは、箕星に兆しが見える。
涒灘(申年)のとき、歳陰は申に在り、歳星は未に居る。七月に東井星・輿鬼星とともに明け方に現れる。これを大音という。昭昭として白い。その順序でないときは、牽牛星に兆しが見える。
作鄂(酉年)のとき、歳陰は酉に在り、歳星は午に居る。八月に柳星の七星・張星とともに明け方に現れる。これを長王という。作作として光芒があるとその国は繁栄し、穀物が実る。その順序でないときは、危星に兆しが見える。干ばつが起こり、女性の喪事、民の疾病がある。
閹茂(戌年)のとき、歳陰は戌に在り、歳星は巳に居る。九月に翼星・軫星とともに明け方に現れる。これを天睢という。白くてとても明るい。その順序でないときは、東壁星に兆しが見える。洪水が起こり、女性の喪事がある。
大淵献(亥年)のとき、歳陰は亥に在り、歳星は辰に居る。十月に角星・亢星とともに明け方に現れる。これを大章という。蒼蒼としており、早朝に現れたときは正平という。その順序でないときは、婁星に兆しが見える。
困敦(子年)のとき、歳陰は子に在り、歳星は卯に居る。十一月に氐星・房星・心星とともに明け方に現れる。これを天泉という。黒みを帯びており、とても明るい。江地が栄えており、兵を起こすのに不利である。その順序でないときは、昴星に兆しが現れる。
赤奮若(丑年)のとき、歳陰は丑に在り、歳星は寅に居る。十二月に尾星・箕星とともに明け方に現れる。これを天晧という。黫然として黒いが、非常に明るい。その順序でないときは、参星に兆しが見える。(『史記天官書』)

歳星と星

京房の『風角書』によると、歳星から生じた星には天槍・天根・天荊・真若・天榬(てんえん)・天楼・天垣がある。甲寅の日に現れる。その星の周りには二つの青い雲がある。これらの星が見えると、水害・干ばつ・兵乱・喪事・飢饉・戦乱が起こり、それらが指し示す国では領地を失ったり、王が死んだり、軍勢が敗れたり、将が殺されたりする。(『晋書天文志』)

歳星の精気

五星が進みすぎたり遅れたり定位置にいなかった場合は、その精が人の形をとって地上に降りる。歳星の場合は貴臣となって現れる。(『晋書天文志』)

『河図』によると、歳星の精気が流れて天棓・天槍・天猾(てんかつ)・天衝・国皇・反登・蒼彗(そうすい)となった。(『晋書天文志』)

他の惑星との関係

歳星と熒惑星

歳星と熒惑星が合すると、干ばつが起こる。(『史記天官書』)
歳星と熒惑星が合すると、飢饉や干ばつが起こる。(『晋書天文志』)

歳星と鎮星

歳星と鎮星が合すると、内乱や飢饉が起こる。(『史記天官書』『晋書天文志』)
君主が戦を行えば敗れる。(『史記天官書』)

歳星と太白星

歳星と太白星が合すると、白衣の会(喪事)もしくは水害がある。太白星が南にあり、歳星が北にあることを「牝牡(ひんぼ)」といって、穀物が大いに実る。太白星が北にあり歳星が南にある場合はまったく実らない。(『史記天官書』『晋書天文志』)

『晋書天文志』によると、太白星が北にあり歳星が南にある場合の穀物は、実ったり実らなかったりするという。

歳星と辰星

歳星と辰星が合すると、策謀または政事の変化がある。(『晋書天文志』)

歳星と鎮星と太白星

歳星・鎮星・太白星の三星が合すると、その星宿がある国の内外で兵乱と喪事があり、君主が交代する。(『史記天官書』)

熒惑星(火星)

  • 熒惑星が司るもの
    『史記』:勃乱・残賊・疾・喪・飢饉・兵乱
    『晋書』:乱・賊・疾・喪・飢饉・兵乱
  • 熒惑星の運行
    『史記』:軌道から二舎以上離れて運行していたときは、三ヶ月で災いが起こり、五ヶ月で兵乱が起こり、七ヶ月で領地が半ば亡び、九ヶ月で大半の領地が亡びる。その後もこの惑星がその国に出入りしていたとき、その国では祭祀が絶える。

『史記』:南方にあり、火の精で夏を司る。日は、丙、丁。礼を失うと、熒惑星に罰せられる。この惑星が出現すると兵乱があり、隠れると兵乱はおさまる。

熒惑星は法使であり、その動きは常に定まらない。この惑星が現れたときは兵乱あり、隠れれば兵乱がおさまる。(『史記天官書』『晋書天文志』)

円弧を描くように回ったり、色が変わったり、前後左右を行ったり来たりすると災いはさらに酷くなる。軌道の南側にあれば男子に、北側にあれば女子の喪事がある。周回または停止すると喪事・兵乱があり、その星がある国は滅亡する。(『晋書天文志』)

熒惑星に従って惑星が集まるときは、礼を以て天下の人々を従える。(『史記天官書』『晋書天文志』)

五星が進みすぎたり遅れたり定位置にいなかった場合は、その精が人の形をとって地上に降りる。熒惑星の場合は童子となって現れ、歌を歌ったり遊び戯れる。(『晋書天文志』)

政治が穏やかだと熒惑星は現れず、危険が迫っているときは隠れない。軌道を外れたら占わなければならない。(『晋書天文志』)

熒惑星と星

京房の『風角書』によると、熒惑星から生まれた星には天陰・晋若・官張・天惑・天崔・赤若・蚩尤がある。丙寅の日に現れ、その周りには二つの赤い雲がある。これらの星が見えると、水害・干ばつ・兵乱・喪事・飢饉・戦乱が起こり、それらが指し示す国では領地を失ったり、王が死んだり、軍勢が敗れたり、将が殺されたりする。(『晋書天文志』)

熒惑星の精気

『河図』によると、熒惑星の精気が散って昭旦・蚩尤の旗・昭明・司危・天欃(てんざん)・赤彗となった。(『晋書天文志』)

他の惑星との関係

熒惑星と歳星

歳星と熒惑星が合すると、干ばつが起こる。(『史記天官書』)
熒惑星と歳星が合すると、飢饉や干ばつが起こる。(『晋書天文志』)

熒惑星と鎮星

熒惑星と鎮星が合すると、憂い事があり災いを支配する。(『晋書天文志』)

熒惑星と太白星

熒惑星と太白星が合することを鑠(しゃく)という。喪事があり、事を起こしてはならない。兵を用いると大敗する。(『史記天官書』)
熒惑星と太白星が合すると、喪事がある。このときは蜂起したり兵を用いてはならない。(『晋書天文志』)

熒惑星と辰星

熒惑星と辰星が合することを焠(さい)という。喪事があり、事を起こしたりしてはならない。兵を用いると大敗する。(『史記天官書』)
「熒惑星と辰星が合すると、兵を用いたり蜂起すると大敗する。(『晋書天文志』)

熒惑星と鎮星と太白星と辰星

熒惑星・鎮星・太白星・辰星の四星が合すると、兵乱と喪事が同時に起こり、君主に憂い事があり、小人は流亡する。(『史記天官書』)

鎮星(土星)

鎮星は憂い事を司り、さまざまな災い(大飢饉・敗戦)を司る。(『史記天官書』)

鎮星は五事において「思(心)」にあたり、ほかの貌・言・視・聴は心によって正しいものとなる。ゆえに、ほかの四星がみな正しい位置にないと、鎮星は動く。進みすぎると、王侯は安寧ではなくなる。遅れると、軍事が起こり回復しない。鎮星がある国は吉であり、領土を得たり女子に福がある。征伐をしてはならない。もし鎮星が定位置になかったら、女子に憂い事がある。ある星宿に久しく留まっていたら、その国には福が厚い。ただし、その星宿をすぐに出た場合は福が少ない。鎮星は天子の星であり、天子が信頼を失えば鎮星は大いに動揺するという。
鎮星に従って惑星が集まるときは、権力を以て天下の人々を従える。(『晋書天文志』)

政治が穏やかなとき、鎮星は帰ってこない。危険が迫っているときは留まるべき星から過分に進む。(『晋書天文志』)

鎮星と星

京房の『風角書』によると、鎮星から生まれた星には天上・天伐・従星・天枢・天翟(てんてき)・天沸・荊彗がある。戊寅の日に現れ、その周りには黄色い雲がある。これらの星が見えると、水害・干ばつ・兵乱・喪事・飢饉・戦乱が起こり、それらが指し示す国では領地を失ったり、王が死んだり、軍勢が敗れたり、将が殺されたりする。(『晋書天文志』)

鎮星の精気

五星が進みすぎたり遅れたり定位置にいなかった場合は、その精が人の形をとって地上に降りる。鎮星の場合は老人や婦女となって現れる。(『晋書天文志』)

『河図』によると、鎮星の精気が散って五残・嶽漢・大賁(たいほん)・昭星・絀流(ちゅつりゅう)・旬始・蚩尤・虹蜺(こうげい)・撃咎(げききゅう)・黄彗となった。(『晋書天文志』)

他の惑星との関係

鎮星と歳星

歳星と鎮星が合すると、内乱や飢饉が起こる。(『晋書天文志』)

鎮星と熒惑星

熒惑星と鎮星が合すると、憂い事があり災いを支配する。(『晋書天文志』)

鎮星と太白星

鎮星と太白星が合すると、疫病や白衣の会、内乱による国の滅亡がある。(『晋書天文志』)

鎮星と辰星

鎮星と辰星が合すると、水が土に塞がれることを意味し、事を起こしたり兵を用いたりしてはならない。(『晋書天文志』)
事を起こした場合は領地を失い、起こさなければ領地を得る。(『史記天官書』)

鎮星と歳星と太白星

鎮星・歳星・太白星の三星が合すると、その星宿がある国の内外で兵乱と喪事があり、君主が交代する。(『史記天官書』)

鎮星と熒惑星と太白星と辰星

鎮星・熒惑星・太白星・辰星の四星が合すると、兵乱と喪事が同時に起こり、君主に憂い事があり、小人は流亡する。(『史記天官書』)

太白星(金星)

太白星の進退は兵乱を表している。高低や遅速、静操、見伏があり、兵乱のときにこれを用いると吉となる。この星が西方から出て動きが乱れると、蛮族が敗れる。東方から出て動きが乱れると、中国が敗れる。期日に満たないのに天の三分の一を過ぎると、向かいの国に疫病が流行る。昼間に現れると、天下に革命が起こる。民衆は君主を交代させる。これは乱紀(国の法規が乱れる)といって、民衆が流亡する。昼に現れて太陽と明るさを競い合うようになれば、強国は弱くなり、小国は強くなる。女主が栄える。また「太白星は大臣を支配し、上公と呼ばれる。大司馬が謹んでこれを観測しなければならない」という。
太白星に従って惑星が集まるときは、兵を以て天下の人々を従える。(『晋書天文志』)

太白星がほかの五星のいずれかを犯すと、大きな兵乱が起こる。(『晋書天文志』)

政治が穏やかなとき、太白星は現れない。危険が迫っているときは隠れない。逆行したときは占わなければならない。(『晋書天文志』)

【中国の例】太和四年(230)十一月壬戌の日、太白星が歳星を犯した。太和五年(231)、諸葛亮が大軍を率いて天水を攻撃した。宣帝(司馬懿)は大将軍としてこれを撃退した。(『晋書天文志』)

【中国の例】青竜二年(234)二月己未の日、太白星が熒惑星を犯した。同年四月、諸葛亮は渭水の南方に陣を構えた。また、呉も兵を起こしてこれに対抗したので、魏は東奔西走を強いられた。(『晋書天文志』)

太白星と星

京房の『風角書』によると、太白星から生まれた星には若星・帚星(そうせい)・若彗・竹彗・墻星(しょうせい)・榬星(えんせい)・白雚(はくかん)がある。庚寅の日に現れ、その周りには二つの白い雲がある。これらの星が見えると、水害・干ばつ・兵乱・喪事・飢饉・戦乱が起こり、それらが指し示す国では領地を失ったり、王が死んだり、軍勢が敗れたり、将が殺されたりする。(『晋書天文志』)

太白星の精気

五星が進みすぎたり遅れたり定位置にいなかった場合は、その精が人の形をとって地上に降りる。太白星の場合は壮年の男性となって現れる。(『晋書天文志』)

太白星の精気が散って天杵(てんしょ)・天柎・伏霊・大敗・司奸・天狗・天残・卒起・白彗となった。(『晋書天文志』)

他の惑星との関係

太白星と歳星

太白星と歳星が合すると、白衣の会がある。太白星が南にあり、歳星が北にあることを「牝牡」といって、年穀が大いに熟する。太白星が北にあり歳星が南にある場合は、実ることもあれば実らないこともある。(『晋書天文志』)

太白星と熒惑星

太白星と熒惑星が合することを鑠(しゃく)という。喪事があり、事を起こしてはならない。兵を用いると大敗する。(『史記天官書』)
太白星と熒惑星が合すると、喪事がある。このときは蜂起したり兵を用いてはならない。(『晋書天文志』)

太白星と鎮星

太白星と鎮星が合すると、疫病や白衣の会、内乱による国の滅亡がある。(『晋書天文志』)

太白星と辰星

太白星と辰星が合すると、策謀の変更または兵の憂い事がある。(『晋書天文志』)

太白星と歳星と鎮星

太白星・歳星・鎮星の三星が合すると、その星宿がある国の内外で兵乱と喪事があり、君主が交代する。(『史記天官書』)

太白星と熒惑星と鎮星と辰星

太白星・熒惑星・鎮星・辰星の四星が合すると、兵乱と喪事が同時に起こり、君主に憂い事があり、小人は流亡する。(『史記天官書』)

辰星(水星)

辰星が黄色で小さいと、大地震が起こる。月と同じくらい明るくなれば、その国には大洪水が起こる。
ほかの五星が辰星に近づくと、みな戦争が起こる。敵が外部にいないときは内乱になる。
辰星に従って惑星が集まるときは、法を以て天下の人々を従える。(『晋書天文志』)

政治が穏やかなとき、辰星は現れない。危険が迫っているときは隠れない。時期でないときに現れたら占わなければならない。(『晋書天文志』)

辰星と星

京房の『風角書』によると、辰星から生まれた星には天美・天欃・天杜・天麻・天林・天蒿(てんこう)・端下がある。壬寅の日に現れ、その周りには黒い雲がある。これらの星が見えると、水害・干ばつ・兵乱・喪事・飢饉・戦乱が起こり、それらが指し示す国では領地を失ったり、王が死んだり、軍勢が敗れたり、将が殺されたりする。(『晋書天文志』)

辰星の精気

五星が進みすぎたり遅れたり定位置にいなかった場合は、その精が人の形をとって地上に降りる。辰星の場合は婦人となって現れる。(『晋書天文志』)

辰星の精気が散って枉矢(おうし)・破女・払枢・滅宝・繞綎(じょうてい)・驚理・大奮祀・黒彗となった。(『晋書天文志』)

他の惑星との関係

辰星と歳星

辰星と歳星が合すると、策謀または政事の変化がある。(『晋書天文志』)

辰星と熒惑星

辰星と熒惑星が合することを焠(さい)という。喪事があり、事を起こしたりしてはならない。兵を用いると大敗する。(『史記天官書』)
辰星と熒惑星が合すると、兵を用いたり蜂起すると大敗する。(『晋書天文志』)

辰星と鎮星

辰星と鎮星が合すると、水が土に塞がれることを意味し、蜂起したり兵を用いたりしてはならない。(『晋書天文志』)
事を起こした場合は領地を失い、起こさなければ領地を得る。(『史記天官書』)

辰星と太白星

辰星と太白星が合すると、策謀の変更または兵の憂い事がある。(『晋書天文志』)

辰星と熒惑星と鎮星と太白星

辰星・熒惑星・鎮星・太白星・の四星が合すると、兵乱と喪事が同時に起こり、君主に憂い事があり、小人は流亡する。(『史記天官書』)

二十八宿

『史記』:星は金の散気で、本は火である。星が多いときは国に吉事があり、少ないときは凶事がある。漢もまた金の散気で、その本は水である。漢の星が多いときは洪水があり、少ないときは干ばつがある。

天帝とその周辺の星

天の中官を天極星という。その中で最も明るいのは、太一が常に住居としているところである。その傍らの三星は三公あるいは太一の子の眷属ともいう。後ろの曲がった四つの星のうち、一番端っこにある大きな星を正妃といって、その他の三星は後宮の属である。これらを巡って守護する十二の星は藩臣で、紫宮という総称である。
前列の北の端にある三星で、見えたり見えなかったりするのは陰徳あるいは天一という。(『史記天官書』)

閣道

紫宮の後ろにある六つの星で、営室まで連なっている。(『史記天官書』)

文昌宮

北斗の魁星を戴き、これを匡す六つの星。一は上将、二は次将、三は貴相、四は司命、五は司中、六は司禄である。魁星の中には、貴人の牢がある。魁星の下には六つの星があり、三つずつ並んでいる。その名は、三能という。三能の色がみな同じであれば、君臣の間柄は安定している。同じでなければ、君臣の仲がうまくいっていないのである。(『史記天官書』)

いろいろな星

天鼓星(てんこせい)

『史記』:音があり、雷のようで雷ではない。音は地にあって地に下る。その音がした国では、兵乱が起こる。

天狗星(てんこうせい)

『史記』:大流星のような形をしている。声があり、地上に下っていく様子は狗に似ている。この星が落ちたところは火光のようで、炎々と天を衝くようである。その下は丸く、数頃の田のようである。上の方が尖っていて黄色く、その下の国では、千里に渡り破軍殺将がある。

枉矢星(おうしせい)

『史記』:大流星に似ている。蛇のように動き、蒼黒い。これを望むと羽毛があるように見える。

長庚星(ちょうこうせい)

『史記』:一匹の布が天に著しているように見える。この星が見えると、その下の国で兵乱が起こる。

瑞星

景星

『史記』:天が明るいときに見える。徳星である。その形は一定していない。常に有道の国に出現する。

『晋書』:半月のような形をしている。朔日と晦日に現れ、月を助けて明るく輝く。ある人が言ったことには「大きな星で中が空になっている」と。またある人は「三つの星があり、赤い方気があり、青い方気が相連なっている。黄色い星が赤い方気の中にあり、またの名を徳星という」と。

周伯星

この星が黄色に光ってきらきらと輝いているのが見えると、その国は大いに繁栄する。(『晋書天文志』)

含誉星

彗星のような輝きをしている。喜ばしいことがあると光を放つ。(『晋書天文志』)

格沢星(かくたくせい)

『史記』:炎のような形をしている。黄白で地から上っていき、下が大きく上が尖っている。これが出現すると、その下の国では種を蒔かなくても収穫がある。土木工事がなければ、必ず大きな害がある。

『晋書』:炎のような形をしている。下の方が大きくて、上の方はとがっている。色は黄白である。地面から立ち上る。この星が見えたら種まきをしなくても収穫がある。土木工事があれば、重大な客人が訪れる。

妖星

彗星

『史記』:秦の始皇帝の時代は、十五年間に彗星が四度見られた。長いものでは八十日間、天に渡るほどの長さであった。その後、秦はついに兵力を以て六区にを滅ぼして中国を統一し、外の四夷を攘って死者が乱麻のように出た。

『晋書』:本体は星のような形で、末の方は彗のような形をしている。小さいものは数寸で、長いものは天の端から端まである。この星が見えると兵乱が起こり、大水害がある。掃除を司り、古いものを除き新しいものを布く。五色あり、それぞれ五行本来の精が司るものに依る。史臣の案では、彗星本体に光はなく、太陽の光が伝わって輝くのである。そのため、夕方に彗星が見えるときは東方を向いており、明け方に見えるときは西方を向いている。太陽の南か北に彗星があるときは、日光に従って方向を変えて先端は折れる。長いものもあれば、短いものもある。彗星の光芒が及ぶところには災いが起こる。

孛星(はいせい)

彗星の仲間である。光芒が一方向に向いているのが彗星で、四方に出ているのが孛星である。「孛」とは、孛孛として非常に強い悪気が生ずることを意味する。内乱が起こるか、さもなければ外で大きな兵乱が起こる。天下に陰謀があり、君主が暗愚であるために傷害を受ける。晏子が言ったことには「君主がもし改めなければ孛星が現れ、彗星よりもっと恐ろしいことが起こるだろう」と。これによると、彗星よりもさらにひどい災いがあるということだ。(『晋書天文志』)

天棓(てんぼう)

紫宮の右にある五つの星。

歳星が既定の場所から離れているのが一舎以下で東北の方に進むと、三ヶ月でこの星が現れる。長さは四丈程で、末の方がとがっている。(『史記天官書』)
本体は星のような形で、末の方がとがっている。長さは四丈。東北方あるいは西方に現れる。戦いを司る。(『晋書天文志』)

天槍

紫宮の左にある三つの星。(『史記天官書』)

天槍が現れると、三ヶ月以内に必ず国を滅ぼす暴君が出てきて処刑される。それでもなお尽きることなく、干ばつや飢饉、暴疾がおこる。(『晋書天文志』)

天欃(てんざん)

石氏が言ったことには「牛のような形の雲である」と。甘氏が言ったことには「本体は星のような形をしており、末の方がとがっている」と。巫咸が言ったことには「彗星は西方に現れて、長さは三丈程である」と。罪人の捕縛を司る。(『晋書天文志』)

蚩尤(しゆう)

『史記』:彗星のように後方が曲がっており、旗のような形をしている。これが見えると、その下の国では王者が四方を征伐する。

『晋書』:彗星のような形をしているが、後ろの方が曲がっており、旗のような形をしている。ある人が言ったことには「赤い雲が目立っているだけである」と。またある人が言ったことには「上の方は黄色で、下の方は白い」と。またある人が言ったことには「雚竹を植えたような形で長いことから、蚩尤の旗と名付けられた」と。またある人が言ったことには「箕のような形で、長さは二丈程である。末の方に星がある」と。逆臣の討伐と混乱を司る。この星が見えた国では兵乱が起こる。大きな兵乱になるか、さもなければ喪事がある。

天衝

人のような形で現れ、青い衣を身にまとい、赤い頭をしているが動かない。この星が見えると、臣下が主君に対して陰謀を企て、兵たちが戦いを起こして天子が亡くなる。(『晋書天文志』)

国皇星

『史記』:大きくて赤い。南極老人星のような形をしている。これが出現すると、その下の国では兵乱が起こり、それを衝いても不利である。

『晋書』:大きくて赤い。南極老人星のような形をしている。ある人が言ったことには「地上から一、二丈のところにあり、炬火のような形をしている。国内の寇難を司る。ある人が言ったことには「その下の国では兵乱が起こり、その兵は強い」と。またある人が言ったことには「内外で兵乱や喪事がある」と。

昭明星

『史記』:大きくて白い。芒角がない。上ったり下ったりする。これが出現すると、その下の国では兵乱が起こり、変乱が多い。

『晋書』:太白星のような形をしているが、光芒はない。ある人が言ったことには「大きくて白く、上がったり下がったりする」と。一説によると「赤い彗星が分かれて昭明になった。昭明の光が消えるのは、覇者の徳を持つ者が起こることを示している。その国の兵に変事が多い」と。また一説によると「大人には凶であり、兵乱が大いに起こる」と。

司危星(しきせい)

『史記』:正西の西方の野に出現する。地上から六丈程離れている。大きくて白い。太白星に似ている。この星が本来出現しない方角に出ると、その下の国では兵乱が起こり、それを衝いても不利である。

『晋書』:太白星のような形をしている。目がある。ある人が言ったことには「真西に現れて、西方の分野にある。地上から六丈程で、大きくて白い」と。またある人が言ったことには「大きくて毛があり、角が二つある」と。またある人が言ったことには「太白星のような形で、よく動く。これを観察して赤ければ、反乱が起こる。強力な兵を攻撃することを司る」と。この星が見えると、君主は法を失って豪傑が立ち上がり、天子は不義によって国を滅ぼす。名声の高い臣下が君主の徳を行う。

天讒(てんざん)

西北に現れる。剣のような形で、長さは四、五丈程である。ある人が言ったことには「鈎のような形で、長さは四丈程である」と。またある人が言ったことには「白くて小さく、よく動く。殺罰を司る」と。この星が現れると、その国では内乱が起こる。互いに讒言を言い合って飢饉・兵乱があり、草木のない枯れ果てた大地が千里も続き、骨が転がっている。(『晋書天文志』)

五残星(五鋒星)

『史記』:正東の東方の野に出現する。その星は、辰星のような形をしている。地上から六丈程離れている。この星が本来出現しない方角に出ると、その下の国では兵乱が起こり、それを衝いても不利である。

『晋書』:真東に現れる。東方の星である。辰星のような形で、地上から六、七丈程である。ある人が言ったことには「蒼い彗星が散ったものが五残である。辰星のような形で角が出ている」と。またある人が言ったことには「この星の表面には気があり、暈のような形をしている。毛が生えている」と。またある人が言ったことには「大きくて赤く、よく動く。これを観察して青く見えるときは、君主が反乱によって亡くなる」と。五分が失われることを示す。また、急な兵乱に備えなければならない。この星が見えると君主が誅され、政治が伯に移り、野の兵乱が成功する。急な兵乱があり、喪事がある。立ち向かうのには不利である。

六賊(大賊星)

『史記』:正南の南方の野に出現する。地上から六丈程離れている。大きくて赤い。しばしば動いて光を放つ。この星が本来出現しない方角に出ると、その下の国では兵乱が起こり、それを衝いても不利である。

『晋書』:真南に現れる。南方の星である。地上から六丈程離れている。大きくて赤く、よく動き光を放つ。ある人が言ったことには「彗星のようなかたちで、五残や六賊が現れるときは天下に災禍があり、逆臣は中枢まで侵略してくる」と。その下の国では兵乱があり、立ち向かうのには不利である。

嶽漢(獄漢)

『史記』(獄漢):正北の北方の野に出現する。地上から六丈程離れている。大きくて赤い。しばしば動き、観察すると中が青い。この星が本来出現しない方角に出ると、その下の国では兵乱が起こり、それを衝いても不利である。

『晋書』真北に現れる。北方の分野の星である。地上から六丈程離れている。大きくて赤く、よく動く。観察すると、真ん中が青く見える。ある人が言ったことには「表面は赤く、下の方には彗星の尾が三本あって横にゆらゆらしている。王が追放されたり、王が刺される」と。この星が現れると、陰の気が出てきてその下の国に兵乱が起こる。また、喪事がある。この星が動くと諸侯が驚く。

旬始星(じゅんしせい)

『史記』:北斗の傍らに出現する。雄鶏のような形をしている。それが怒ると青黒くなり、伏した鼈のようになる。

『晋書』:北斗の傍らに現れる。雄鶏のような形をしている。怒ると青黒くなり、すっぽんが伏しているような形になる。ある人が言ったことには「起こった雄鶏で、争乱を司る」と。またある人が言ったことには「黄色い彗星が分かれて旬始となった。君主を立てることを表しており、兵乱を司る」と。この星が見えると、臣下は乱れ兵乱が起こり、諸侯は暴虐に振る舞う。十年後に聖人が立ち上がり、狡猾な者たちを討ち取る。ある人が言ったことには「この星が現れると、諸侯は雄鶏のような声を上げる」と。

天鋒

杓星の端にある二つの星のうち、外側にある盾の星。内側にある矛の星を招揺という。(『史記天官書』)

矛のような形をしている。天下が乱れているとき、この星が見える。(『晋書天文志』)

燭星(しょくせい)

『史記』:太白星のような形をしている。出現しても運行せず、すぐに消える。この星に照らされた国は、城邑が乱れる。

『晋書』:太白星のような形をしている。この星は現れても運行せず、すぐに消える。ある人が言ったことには「主星の上に三本の尾が上がっている」と。この星が現れた城・村では変乱が起こる。大盗賊が現れても失敗する。また、五色を以て占う。

蓬星

二斗器ほどの大きさで、色は白い。王星ともいう。夜に燃える火のように光を放っている。多くて四つ、五つ、少なくて一つ、二つである。一説によると「蓬星は西南に在り、長さは数丈程で左右がとがっている。現れると他の場所へ移動する。この星が見えると、三年以内に乱臣が死罪になる」という。また「この星が見えた場所では大水害や大干ばつが起こる。五穀は収穫できず、人々が共食いするようになる」という。(『晋書天文志』)

長庚

一匹の布を天に広げたようである。この星が見えると、兵乱が起こる。(『晋書天文志』)

四鎮星(四填星)

『史記』:四隅に出現する。地上から四丈程離れている。

『晋書』:天の四隅に現れる。地上から六丈余り離れている。ある人が言ったことには「四丈程だ」という。またある人が言ったことには「この星は大きくて赤く、地上から二丈程離れている」という。常に夜半の時間帯に現れる。この星が見えると、十ヶ月後に兵乱が起こる。その四隅の下の兵が皆立ち上がるのである。

地維蔵光(地維星・威光星)

『史記』:四隅に出現する。地上から三丈程離れている。月が出始めるのに似ている。この星が見えると、その下の国では兵乱が起こる。乱者は亡び、徳のある者が栄える。

『晋書』:天の四隅に現れる。ある人が言ったことには「大きくて赤く、地上から二、三丈程離れている。月が始めて出るようである」という。この星が見えるとその下の国で兵乱があり、乱を起こした者は滅んで、徳のある者が栄える。

帰邪(きじゃ)

『史記』:星のようで星でなく、雲のようで雲ではない。これが出現すると、その下の国では必ず国に帰る者がある。

客星(かくせい)

普段は観測されない場所に突然現れる星。時間が経つと見えなくなる。

張衡の説によると「老子の四星及び周伯・王蓬絮・芮(ぜい)のそれぞれ一つは五星の間に紛れている。現れる時期は決まっていない。決まった動きもない」という。
『荊州占』によると「老子星の色は淳白で、この星が現れる国では飢饉・凶事・善悪・喜怒がある。周伯星は黄色で煌々としており、この星が現れる国は大いに栄える。蓬絮星は青くて熒熒と光っており、この星が現れる国では風雨が時節通りに訪れない。日照りによって作物が育たず、五穀は実らず、蝗が多く出る」という。
また言ったことには「東南に三つの星が現れる。その名を盗星という。これらの星が現れると、その下の国には大盗賊が現れる。西南に三つの星が現れる。その名を種陵という。これらの星が現れると、天下の穀物の値段が十倍になる。西北に三つの大きな星が現れ、それらは白い色をしている。その名を天狗という。これらの星が現れると、人々が共食いをする。大凶である。東北に三つの大きな星が現れる。その名を女帛という。これらの星が現れると、大きな喪事がある」という。(『晋書天文志』)

流星

流星は天からの貴い使者であり、大きな星は使者の位が高いことを示している。(『晋書天文志』)

両軍が相対するときは、大流星がある。星が軍隊の上を飛んだり、軍隊の中に落ちるのはみな敗戦を意味している。(『晋書天文志』)

【中国の例】建興十三年(235)、諸葛亮は大軍を率いて魏を攻め、渭南に陣を構えた。長星が現れ、赤い芒角があった。東北から西南に流れていき、諸葛亮の陣営に落ちた。9月、諸葛亮は陣中で卒去した。(『晋書天文志』)

白虹

白虹は兵乱を表す。
白虹が太陽を貫くと、臣下に反乱を起こす者がいる。(『晋書天文志』)

雲(雲気)

雲気を仰いで望むときは三、四百里に渡っている。平らに望むときは桑楡の上にあり、千余里または二千里に渡っている。高いところに登って望むときは、下の地に属していて三千里に渡っている。

『史記』:風が吹いてくる方向で吉凶を占う。

風の方向吉凶
大きな干ばつ
西南小さな干ばつ
西兵乱
西北戎菽(胡の豆)が実る
小雨が降っているときは外敵が攻め込んでくる
平均的な収穫
東北収穫が多い
大水
東南民に疾疫がある、凶年

大雨

  • 長徳四年(998)9月1日、大雨によって鴨川が決壊し、京中が海のように水浸しになった。(『権記』)
  • 長保二年(1000)4月7日甲寅の未の刻、大雨が降った。(『権記』)
  • 同年8月16日庚申、大雨によって鴨川が決壊し、都が浸水した。道長の邸宅は海のように水が溢れていた。(『権記』)
  • 寛弘元年(1004)8月24日丙子、一日中雨が降った。6月10日以来降っていなかった。(『御堂関白記』)

  • 長徳元年(995)10月17日、一条天皇は右大将に前日の雷について御卜を奉仕するよう命じさせたが、天文道が変異勘文を提出してきた。安倍晴明曰く、先に天文勘文を提出した場合、御卜は行わなかったということだったので、御卜は取りやめになった。(『権記』)
  • 長徳三年(997)11月9日庚午の未の刻、大雨と雷鳴があり、藤原実資は怪異ではないかと思った。(『小右記』)
  • 長徳四年(998)9月23日亥の刻、大きな雷鳴が一度だけあった。(『権記』)
  • 長保二年(1000)4月7日甲寅の未の刻、大雨と大雷があった。(『権記』)
  • 寛弘七年(1010)6月6日癸丑、雷が数回鳴ったので、雷鳴陣を立てた。(『御堂関白記』)

地震

劉向(りゅうきょう)の説によると、地震が起こるのは陰の気が余っているからだという。(『晋書天文志』)

天文録曰く、民が憂えていると地震が起こる。
『京房妖占』によると、春に地震が起こると、その一年は栄えない。
『天地瑞祥志』によると、二月に地震が起こると、三十日以内に戦が起こる。また、月が奎宿を通過しているときに地震が起こると、国土に損害を及ぼすほどの争いが起こる。
『内論』によると、月が奎宿を通過している時に地震が起こるのは、干ばつが起きる。天子や大臣にとってよくない。
『雑災異占』によると、女官に喪があり、飢饉が起きる。
『東方朔占』によると、二月に地震が起こると、大きな喪がある。

  • 長徳三年(997)5月21日亥の刻、地震があった。(『権記』)
  • 長徳四年(998)10月1日未の刻、地震があった。→後に安倍吉昌が天文密奏を行った。(『権記』同年10月3日条)
  • 同年10月3日戌の刻、大きな地震があった。(『権記』)
  • 寛弘三年(1006)2月2日乙亥、辰の刻に地震があった。(『権記』同年2月3日条)

月の異変

  • 長徳四年(998)9月26日申の刻、月蝕があった。→後に安倍吉昌が天文密奏を行った。(『権記』同年10月3日条)
  • 長保四年(1002)6月9日癸酉、月が心後星を犯した。(『権記』同年6月15日条)

星の異変

同宿

  • 正暦三年(992)1月4日己亥の午の刻、金星が上空を通過した。また、酉の刻に金星とたたら星が並んでいた。5日に天文密奏が奏上された。(『権記』)
  • 長徳四年(998)9月26日、月と填星(土星)が同宿した。→後に安倍吉昌が天文密奏を行った。(『権記』同年10月3日条)

その他

  • 寛弘二年(1005)2月16日、藤原実資は日月がともに火のような色をしていたのを見た。17日も18日も月が火のような色をしていたので県奉平に問うたところ天変とすべきだということで、翌日上奏することになった。(『小右記』同年2月18日条)

天文密奏

  • 正暦三年(992)1月5日、4日に金星が上空を通過したこと、金星とたたら星の同宿があったことについて天文密奏があった。(『権記』同年1月4日条)
  • 長徳四年(998)10月3日申の刻、天文博士安倍吉昌が9月26日にあった月と填星の同宿と月蝕、10月1日未の刻の地震について天文密奏を奏上した。(『権記』)
  • 長保元年(999)9月22日、天文博士県奉平が天文密奏を奏上した。(『権記』)
  • 長保二年(1000)2月23日辛未の夕方、薄い日蝕があった。安倍吉昌が天文密奏を奏上した。(『権記』)
  • 同年4月7日甲寅、天文博士県奉平が天文密奏として火事に注意が必要だと奏上した。(『権記』)
  • 長保六年(1004)3月14日戊戌、県奉平が天文密奏を奏上した。(『御堂関白記』)
  • 寛弘二年(1005)丁丑、ここ数日間に渡って何度か天変が奏上されていたということだった。(『御堂関白記』)

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